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SMILE!
2



流星は嫌なんだろう。あと少しと言って、もしかしたらそのまま話さないかもしれない事が。


「あと少し、あと少しって言って結局僕が卒業するまで話さないつもり?」

「…違う!」


違う。
ちゃんと話すつもりなのに


「じゃあいつ言ってくれるの?はっきり言ってくれないと、僕は待ってられない」

「……」

「一週間後?二週間後?八くんはいつならいいの?」


俯いて考えた。おれはいつなら、話せるんだろうか。
ああ、分かった。あの日に話せばいい。言い方を変えれば、あの日にしか話せないんじゃないかと思う。


「……24日」

「24日?」

「……その日の夜、全部話す」


24日はおれの25歳の誕生日だ。
その日なら、全てを話せる気がする。ひとつ歳を取るから、成長するために話をする。
おれの誕生日を知ってるのは、良仁さんだけ。昔、六にも教えたけど忘れているだろう。


「その日まで、待てばいいの?」

「……ああ」

「分かった、待つよ」


よかった、納得してくれたみたいで。ただもうひとつ話さなければいけない事がある。
流星だけじゃなく皆に話すと。


「……それと、」

「まだ何かあるの?」


怪訝な顔をする流星。怒ってほしくなくて、流星の手を取る。


「…八くん?」

「……流星だけじゃ、なくて、皆にも話したい、と思ってる」

「先に僕だけに、教えてはくれない?」

「……ごめん」


一日に二度も親の事を話す勇気はない。取った流星の手を無意識に握り締める。
取った手を流星に握り返された。


「いいよ、分かった」

「……ありがとう」


軽く頭を下げると、流星はため息をつき、おれを抱きしめた。


「……流星?」

「絶対話してくれないと思った、拒否られたし…」

「……そ、れは」

「ごめんね、無理矢理聞こうとして」


流星が謝る事ない。おれの事を知りたいと思ってくれただけなのだから。ただ親の事を言われたのは、結構つらかったが。


「でもね、分かって。僕は八くんが好きだから知りたいよ、八くんの事は全部」


耳元で呟かれる言葉は、優しい声でやっとほっと出来た。
もう怒ってないみたいだ。


「……おれの事を、知って…後悔しないか…?」

「…知って後悔するような、話なの?」

「……分から、ない」

「しないよ。八くんの事聞けるんだから、後悔しない」


だったら、いいけど。
おれはまだ怖い。変わってしまうんじゃないかと。話すと決意したけれど、何から話せばいいんだろうか。
まだ悩んでいる。


「ずっとこうしてたいな」


強く抱きしめられ、首筋に流星の顔が埋まる。


「……流星」


首に埋まる流星の頭をそっと撫でる。


「そういう事するから、もっと好きになっちゃうでしょ」

「……ご、めん」

「何で謝ってんのー」


分からなかった。
自分の気持ちが。ああ、おれは誰が好きなんだろう?
時間は過ぎていくばかり。決して時間は待ってはくれない。
タイムリミットが迫る。



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あきゅろす。
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