[携帯モード] [URL送信]

SMILE!
3



「教えたのか?」


その言葉に首を振る。


「……嫌だって、言った」


嫌だと、言ってしまった。
教えられなかった。


「…怖かった。おれの事、知ったら…流星は、皆はどう思うんだろうって」


親がいない、捨てられたって知ったら、おれを見る目が変わってしまいそうで。


「…六は、待っててくれたから話せた。…だけど流星は、急かしてるように、思えて」


ただ流星はおれの事を知りたいんだと分かっているけど、早く話してくれと急かされている気がしてならない。


「あの時の俺は八の事、早く聞きたくても聞けなかったんだ」

「……何、で…?」

「やっと少し話してくれるようになった時でさ、八の事気になってたけど無理に聞いたら嫌われると思って、聞けなかった」

「……む、つ」


だから話してくれるまで待ってた、と六は苦笑する。


「…ご、めん…」


今思い返せば、中学のおれは酷いと思う。
誰に対しても話す事はせず、ただそこにいるだけ。嫌われても仕方ない人間だった。


「謝んなよ、昔の事だろ?」


ぐしゃっと頭を撫でられ、顔を緩める。


「もし俺が佐々の立場なら、俺も聞いてたと思う」

「……そう、なのか?」

「そりゃあ、好きな奴の事なら全部知りたいからな」


好きだから知りたい
言わなければいけない気がする。おれの事を好きだと言ってくれた人達に、おれと一緒にいてくれる人達に、


「……おれ、話そうと思う」

「そっか」

「…今すぐには無理だけど、出来るだけ早く話したい、と思う」


怖いけど、話してみよう。
どう思われるかなんて、今考えたって仕方ない。おれの事を話して、何かが変わってしまったら……それは、それで仕方のない事なのかもしれない。


「ずるいよなぁ」


唐突にそう言う六を見ると、六は微妙な顔をして笑っていた。


「…何がだ?」

「俺が八と出会った時は、話すのにも一苦労したのに、佐々達は最初から八と普通に話せてるだろ?何かずるくねぇ?」

「…でもそれは、六と良仁さんのおかげだ」


今皆と普通に話せるのは、六と良仁さんがいてくれたから。
たぶん、どちらか片方が欠けていても駄目だったと思う。


「そうだよな、あの時の八は俺しか知らないんだよな」

「…ああ」

「俺に感謝しろよ」

「…してる」


六には感謝してもしきれない。


「ありがとう、六」


笑って言えば六も笑ってくれる。
笑った六はすぐに真面目な顔をして、おれの頬に指を滑らせた。


「はち、好きだよ」


その言葉で動けなくなるおれを六はくすりと笑い、口づけた。


「…っ、ん…ン…」


するりと首筋を撫でられ、ぴくと身体が反応する。


「…はっ…、む、つ…」


こつん、と額同士がぶつかり至近距離で目が合う。
近い、
相手は六だから、それ程恥ずかしくはないが、あまりに近くて息をするのも躊躇う。


「頑張れよ、側にいるから」

「……う、ん」


大丈夫、きっと話せるから。
六が側にいるなら、おれは頑張れる。
おれの全てを話そう。でもあと少しだけ時間が欲しい。



[まえ][つぎ]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!