[携帯モード] [URL送信]

SMILE!
2



それに、


「…鈴の事、嫌いになってたら、会いになんて来ない」


鈴と気まずくなるのは嫌だし、おれは鈴と今まで通り話したい。
そう呟くと、腕を掴んでいた手を握られた。


「そうやって優しいから、期待するんですよ」


優しくしてるつもりは、あまりない。ただ思った事を言ってるだけで。


「期待していいんですか」

「……え、いや…それは、」


言い淀んでいると、ステージ上で行われている劇のセリフが耳に入ってくる。


《いつまで待てばいいんだ!お前は俺を待たせてばかりだ!!もううんざりだ…!》


そのセリフにドクンと心臓が跳ねた。
おれに当て嵌まるセリフ。今おれは皆を待たせている。もしかしたら、皆もうんざりだと思っているのかもしれない。


「……鈴は、あの人みたいに、」

「え?ああ…待つのにうんざりしてるかですか…?」


おれの言いたい事が分かった鈴は視線をおれに向けた。
闇の中で、鈴と目が合う。


「正直嫌です、いつまで待てばいいんだろうって思います」


やっぱりそうだよな…
待つのが好きな人など、いるのだろうか。
少なくともおれは嫌いだ。


「でも、待つって決めたのは俺です。本気で好きだから、嫌でも待ちます、ずっと」


鈴は、そっとおれの頬を撫で下ろす。


「……ご、めん」

「謝るのは俺の方です。本当にすみません、酷い事して」

「……いや、大丈夫だったから」


ぎゅっと手を強く握られた。
おれの耳元に顔を寄せ、呟く。


「八さんを好きになって、すみません」


前髪をかき上げられ、額にキスをされた。
好きになったからって謝る事ないのに。戸惑いの方が大きかったけど、嬉しかったのも事実。
だから、謝らなくていいのに。

結局文化祭が終わるまでそのまま鈴と一緒に体育館で過ごした。
歌を歌ったり、ダンスしたりと見ているだけで楽しかった。


「終わっちゃいましたね」

「……ああ」

「俺は今から風紀の集まりがあるんですけど、八さんはどうしますか?」

「……おれは家に戻る」


シマに留守番させているし、戻ってエサもやらなければいけない。


「わかりました」


気をつけてください、と鈴に優しく頭を撫でられた。
鈴と体育館で別れ、ひとり家に帰った。玄関を開けるとシマが足元に寄って来る。抱き上げて、頭を撫でるとごろごろと喉を鳴らす。

鈴と仲直り出来てよかった。
喧嘩をしていたわけじゃないが、気まずいままは嫌だった。
あとは流星。会えるだろうか。
流星のことだから、うろうろして見つからないかもしれない。
それに明日は木野の所へ行く。


「……あ、」


木野の所へ行くのはいいが、木野のクラスを知らない。
聞いておけばよかった。
とにかく明日は流星に会う事と、木野のクラスへ行く事を自分の中で決意した。



[まえ][つぎ]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!