SMILE!
4
「江夏って、好きなタイプとかあんのか?」
唐突に聞かれ、ばっと木野を見ると木野は笑っていた。
「くまで見られると怖いな、つぶらな目が余計に」
「……何で、そんな急に」
「気になったから。江夏は付き合うとしたら、どんな奴がいいんだ?」
そんな事、考えた事もなかった。
答えなければいけない雰囲気で、少し考えてから答える。
「……ちゃんとおれの話を聞いてくれる人」
「たくさんいるだろ」
「……そんな事ない」
ちゃんと聞いてくれる人は少なかった。
おれは喋るのが苦手だし、遅い。だから、イライラする人は多かったが、ちゃんと聞いてくれる人はあまりいなかった。
だけどここに来てからは、おれの事をわかってくれる人が前よりもいて嬉しかった。
「他は?」
「……他…、幸せだったら、おれはそれでいい」
幸せなら相手には何も望まない。
それだけで、満足なんじゃないかと思う。
「……木野は?」
「オレに聞くのか」
「……おれは答えたのに、言わないのは狡い」
「わかったよ」
木野は難しい顔をして、ぽつりぽつりと話し出す。
「こういう奴がいいって思う程のタイプはねぇ。好きになったら、タイプとか関係ねぇしな」
よくそんなカッコイイ事が言えるな。顔も性格も良いなんて、羨ましく思う。
「守ってやりてぇって思う」
「……?」
「もしオレに好きな奴が出来たら、守って支えてやりたい」
木野が恋人だと、その相手は絶対幸せなんだろうな。
優しくて、強い人間だから。
「…二度と傷付けないように」
二度と?どういう意味だろう?
不思議に思ったが、木野は笑うだけ。
「……木野が、恋人だときっと幸せなんだろうな」
「…どうだろうな」
―side.深雪
じゃあお前が恋人になってくれ、とは言えなかった。
さっきも言えなかった。オレはお前が好きだ、と。
江夏を助けたあの時から、たぶんオレは江夏に惚れていた。
最初はどうでもよかった、ただ紅の担当だから気にかけていただけで。
今はどうでもよくない。
見てると守ってやりたくなる。
オレが支えてやりたいと思う。
出来る事なら、オレが側にいてやりたい。
でもオレが好きだと言えば、江夏は困るだろう。
だから言うのを躊躇った。
それに好きだと言っても、オレと付き合ってくれるとは限らない。
江夏を好きな奴は多いから。
告白も出来ていないけど、諦めかけている。
明日、江夏が本当にオレの所に来てくれたら、もう一度告白しようと思う。
だけど、来なかったら終わりだ。
全部諦める。
ただの優しい不良で、いてやろうと思う。
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