SMILE!
3
たわいもない話を木野としていると、前を向いていた木野が突然おれの方を向く。
「あのさ、江夏に話があんだけど…いいか?」
何だろうと思いつつも、一度だけ頷く。
「…前にお前を助けたっつーか、あっただろ?」
「……あ、」
たぶん、楢木先生の時の事を言ってるんだろう。
「…あの時はいろいろ悪かった。なんつーか、余計な事までしただろ?」
「……余計な、事…?」
「キスとか。今更おせぇけど、一応謝っときたかったんだよ。あの時、お前は嫌じゃないって言ったけど、好きでもない奴とのキスはさすがに、嫌だろ?」
そんな事言ったら、おれは木野以外にも好きじゃない人とキスしているし、嫌じゃないって言ったのは、本当だった。
「……嫌じゃなかった、嘘じゃない」
「江夏、」
「…あの時木野がいなかったら、おれはきっと立ち直れなかったと思う。だけど、木野がいたから、助けてくれたから、」
今のおれがいるんだ。
だから、ありがとう
見えていないだろうけど、木野に向かって微笑んだ。
「…礼を言われるような事はしてねぇよ」
照れたように木野は顔を緩めて、首を掻く。
「それでさ…、」
「……何だ…?」
言いにくそうにする木野。
首を傾げる。
なんだろう…?
「オレは、」
「……?」
「…お前、が」
おれが…?
そこまで言って木野は口を閉ざして、おれを見る。
「……木野?」
木野は少し考える素振りを見せたあと、口を開く。
「…やっぱいい」
「……え?」
「いや、その…たいしたことじゃねぇから」
途中で止められると気になる。
気になる、と木野に言うと木野は困った顔になった。
「…気にするなよ。あーだから、オレはお前が、心配なんだよ」
「…心配…?」
「危なっかしいから。さっきだって、オレにぶつかるし」
「……それは、悪かった」
確かに、たいしたことない話。
ただ少し違和感を感じたけれど
.
[まえ][つぎ]
[戻る]
無料HPエムペ!