SMILE!
文化祭
時が流れるのは早く文化祭当日
文化祭は土日の二日間あり、月曜と火曜が休みになる。
文化祭の準備が忙しいのか、皆とは会えていない。流星も隠岐も鈴ともあれ以来会っていないから、気まずいままだ。
会いに行っても何を言えばいいのか分からない。それに三人がどこにいるかすらも知らない。
連絡は出来るけど、何を話せばいいのかわからない。
同じ問題に突き当たる。
「…シマ、今日と明日は散歩禁止だからな」
擦り寄ってくるシマを撫でる。
文化祭は外部からも人が来るから危ない。だから文化祭の間はシマは家の中で、留守番。シマにエサをあげ、窓の鍵を閉める。
「…行ってきます」
にゃあ、と鳴くシマの声を聞いて家から出た。
玄関の鍵を閉め、近くに置いてある植木鉢の下に鍵を隠す。持っていると無くす可能性が高いから。
せっかくの文化祭だから、行ってみようと思う。それに三人に会えるかもしれないから。
「……よし、」
自分に気合いを入れ、校舎の方へ向かった。校舎に近づくにつれ、仮装した生徒が増え、出店も増えていく。
去年よりも豪華になっている気がした。楽しそうな雰囲気
こういうのを見たら、高校生が羨ましくなる。でも今、味わえているから満足はしている。
しばらくその場で文化祭の雰囲気を感じていると、すいませんと一人の生徒に話し掛けられた。
「……おれ…?」
「あ、はい。…用務員の方ですよね?」
頷くと、その生徒が、ガバッと頭を下げた。
何だ、急に…
「あのお願いがあるんです!身長的に貴方ぐらいしかいなくて!」
…は?身長?
頭に疑問を飛ばす。
「文化祭中って暇ですか?」
何も用事はないし、暇だよな。
また頷くと、その生徒は一緒に来てください!とおれの手首を掴み走り出した。
何が、どうなってるんだ。先に説明してほしい…
走って連れて来られたのは校舎一階にある空き教室。文化祭に使う道具で教室の中は、ごっちゃりしていた。
「あのすいません、これ着てくれませんか」
「……これ、って」
おれの近くの机に置かれたそれは、くまの着ぐるみ。よく遊園地とかで見るような。
「文化委員で着る予定だったんですけど、皆予定があったり、身長が小さかったりで。それで貴方に着てほしいんです」
「……おれで、いいのか」
「是非お願いします!」
暇だし、着ぐるみだったら何も気にせず文化祭を見て回れるかもしれないと、着ぐるみを着る事を了承した。
「ありがとうございます!」
お礼を言われ、少し照れ臭くなった。もうすぐ一般の人が入って来る時間らしく急いで着ぐるみを着た。
「大丈夫ですか?前見えます?」
見える事は見えるが、かなり視界が悪い。それに頭が重い。気をつけないと、すぐに頭が取れてしまいそうだ。
頭が取れない程度に大丈夫だと、頷く。
「お昼で止めてもらって大丈夫です。それと終わったら、着ぐるみはまたここにお願いします」
コクンと頷く。
じゃあ外に行きましょう、とその生徒は着ぐるみの手を取り、歩き出す。
慣れるまで大変かもしれない。今は手を引いてくれているから、大丈夫だが一人だと大変だろう。
ある程度人通りがある所に連れて来られ、その生徒はじゃあお願いしますと言って、走ってどこかへ行ってしまった。
ひとりになってしまった。
とりあえずこの辺をうろうろしてればいいんだろうか、
視界の悪さに慣れるため、近くを歩き回る。まさか着ぐるみを着るとは思っていなかった。
でも、こっちの方が気楽でいいかもしれない。
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