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SMILE!
3



「…おかぁさん、」

「……ん、」

「起きて」


いつの間にか寝ていたようで、帰って来ていた滝登に起こされた。


「こんな所で寝てたら、風引いちゃうよぉ?」


床で寝ていたおれを滝登は抱き起こす。おれは滝登の手首を掴み、鎖を外すように言う。


「……滝登、外してくれ」

「どうして?」

「…どうしてって…。滝登、こんな事間違ってる」

「何が間違ってるの?何が間違ってて、何が正しいかなんて、誰にも分からないでしょぉ」


そんな事言われるなんて、思っていなくておれは口を閉ざす。
滝登の言う事も分からないわけじゃない。だけど、これは間違ってるんじゃないのか…?
誰かもう一人いたら、客観的に見て判断してくれたかもしれないが、生憎ここにはおれと滝登しかいない。
俯いていると、滝登は思い出したように声を上げた。


「そうだ、おかーさんの所に猫いたでしょぉ?エサあげなきゃいけないよねぇ?ボクちょっと行ってくるねぇ」


微笑んだ滝登はまたおれを置いて部屋を出て行った。
今のうちにどうにかしなければ、
何かないかと部屋を見渡すと、滝登の鞄が床に置いてあった。
もしかしたら、携帯電話が入っているかもしれないとその鞄を手に取る。人の鞄の中を無断で見るのは気が引けるが、仕方ない。
心の中で滝登に謝る。
教科書やノートの間に青い携帯電話があった。


「……よかった」


これで連絡出来る。
多分おれの知ってる人も登録されているだろうから、その人に電話すれば、何とかなるだろう。
携帯電話を操作し、電話帳を開きいて、知っている名前を探していく。が、全部あだ名で登録されていて混乱した。
電話帳の中に、しょうくんとあった。


「…しょうくんって、」


確か大神の事じゃなかったか?
一度だけ滝登が大神の事をそう呼んでいるのを聞いた。
本当なら、風紀の誰かがよかったが見つけられそうもない。それに早くしないと、滝登が帰ってきてしまう。
電話帳のしょうくんが、大神かどうか核心は無いが電話をかけるしかないだろう。
無駄に緊張する。微かに震える手で通話ボタンを押した。耳に当てると呼び出し音が聞こえた。
電話をしているだけなのに、心臓がバクバクと音を立てている。


《もしもし、滝登?何か用?》


その声を聞いてほっとした。
間違いなく、大神だ。


「…大神、」

《……誰》


おれだと気付いていないらしく、声が低くなった。


「……あ、えっと…江夏、です」

《は?江夏サン?》

「……はい」

《何、どうしたの》

「…頼みが、あって」


電話の向こう側で、大神がため息をつく。


《一応聞いてあげる》

「……助けてほしい」


そう言うと、無言になった。
大神が話すのを待っていると、大神はまたため息をついた。


《何で、僕なワケ?事情は知らないけどさ他にいるでしょ》

「…だって、しょうくんしか分からなかったから」

《………しょうくんって、呼ばないで。心臓に悪いから》

「…悪い、」


しょうくんって呼んだつもりはなかったんだが…
というか、早く大神に伝えないと


「…それで、あの…滝登の部屋に来てほしいんだ」

《滝登に何かされてんの?》

「……まあ」

《ふぅん。それで一人じゃどうしようもない状況だから、僕に来てほしい、と》


そうです。
理解が早くて助かる。


「…頼む」

《気が向いたら行ってあげる》

「…えっ、ちょっ、大神…!」


ブツ、と通話が切れた。
大神に電話したの間違いだったかもしれない…



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あきゅろす。
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