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SMILE!
檻の中



滝登が帰って来たその日の夜中、シマと共に寝ているとコンコンと扉をノックする音が聞こえ、目を覚ます。
寝ぼけながら時計を見ると、針は1時半を指していた。


「……だ、れ…」


嫌な感じしかしない。鶴岡の時も夜中だったから、余計に。
目を擦り、玄関に向かう。電気をつけるが眩しくて顔をしかめる。
恐る恐る玄関の扉を開けると、


「……た、きと…?」


口元だけを緩めた滝登がいた。
こんな夜中にどうしたんだろう?夜中に来るくらいだから、何かあったんだろうけど…


「……どう、したんだ…?」

「おかーさん、一緒に来て」

「……え?どこに…?」

「ボクの所に」


滝登の所…?
首を傾げると、滝登に手を取られる。


「来てくれるよね?」


そう言った滝登の顔はいつもとは全く違った。その目が少し鶴岡の雰囲気に似ていて恐怖を感じた。
何か言う前に、滝登に手を引かれる。


「……たきっ、」

「来て」


滝登らしからぬ少し低い声で言われ、口を閉ざす。
滝登は家の電気を消すとおれの手を強く握り、家から連れ出す。
暗闇を滝登に引かれ、歩く。


「……滝登っ、どうしたんだ」

「早い方がいいでしょぉ?」

「…っ何が、」

「檻の中に入るんだよ」

「……え?」


戸惑うおれに滝登は暗闇の中でくすりと笑った。
訳が分からず、滝登の部屋に連れて来られた。部屋に入ると、滝登は寝室に向かう。


「……滝登」


ここに来るまで何度も名前を呼んだが、無視されている。


「…あのね、おかーさん」


やっと反応してくれた滝登は、おれにぎゅっと抱き着き、見上げてきた。


「一緒に寝てくれる?」

「……そのために、おれを連れて来たのか…?」

「うん、ごめんねぇ…なんか、ひとりじゃ寝れなくてぇ、」


泣きそうな顔をする滝登の頭を撫で下ろす。
それならわざわざここに来なくても、おれの家でよかったんじゃないだろうか。


「またおかーさんの事とか、忘れたらどうしようって、思ったら怖くて…」

「……、」

「だから、一緒に寝てくれる?今日だけでいいから」


ここまで来たら、断るわけにもいかない気がする。
それに断ったら滝登は泣き出しそうだ。


「おねがい」

「……わかった」

「ありがとぉ!」


ぎゅうっと抱き着いてくる滝登を受け止める。抱き着いてきた滝登が口元だけを緩めて笑っていた事に、おれは全く気付かなかった。

ベッドに滝登と二人寝転ぶ。
擦り寄ってくる滝登。おれよりも高い体温が、眠気を誘う。夜中という事もあり、おれはすぐに眠りについた。



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