SMILE!
2
「……分かった」
「はっちん、お疲れ様」
にこりと笑う黒川に頷き返すと、黒川が何かを思い出したように声を上げた。
「あ、そういえば新しい先生来たんだよね?はっちんの知り合いだって噂、ほんと?」
「……そう、だけど」
「ふーん、はちゅとその教師すごく仲良さそうだよねー」
何で、仲良いって知ってるんだろう?
昨日いなかったのに。
そう思っていたら、青柳が携帯電話を見せてきた。画面にはおれが六に抱き着いている写真が表示されている。
「この写メ昨日、猫が送ってきたんだよー」
…流星、
何をしてくれてるんだ
わざわざ送らなくていいし、むしろ撮らなくていい。
「どういう関係なんだ?」
木野にそう問われて、親友と答えると青柳が不服そうな顔をした。
「親友だからって抱き着く必要はあるのー?」
「……それは…、」
感動して思わず抱き着いてしまった。
言い淀んでいると、青柳が指をおれの頬に突き刺す。
「はちゅとその教師は親友なんでしょー?それ以下でもそれ以上でもないんだよねー?」
六は親友。それ以外はない。
コクンと頷くと青柳はじゃあいいや、と傘をくるくる回した。
「みーちゃん、そろそろ授業行かないと」
「…行く、のか…?」
この五人は今までろくに授業出ていなかったんじゃないのか?なのに、今日は行くんだな。
「うん、今日からちゃんと授業受けるよー」
「…頑張って」
「江夏もな」
木野の言葉に頷く。
「じゃあかいさーん!」
はっちんまたねと黒川が出て行き、それに続いて木野と五十嵐も出て行った。
「晃雅、先行ってるよー」
「ああ」
青柳はおれの頭をぽんぽんと叩いてから出て行く。残ったのはおれとソファーに座る隠岐だけ。
「……行かない、のか?」
聞いたのに隠岐は無言。
数分間、沈黙が続いた。少し気まずくて俯く。ソファーから立ち上がる音がして顔を上げると、隠岐がこっちに歩いてきていた。
「……隠岐…?」
目の前に立った隠岐はおれの右手を取る。
「やっぱり、残ったな」
右手の甲には刺された傷痕が残っていた。それはまだはっきりと残ってる。時が経てばきっと薄くなるんだろうけど
「……おれは…気にしてない」
気にするほどの傷痕じゃないし、きっとあの事を一生忘れないだろうから、痕が残ってよかったと思う。
「そうか、」
隠岐はそれだけ言うと、おれの手を離して部屋を出て行った。
いつまでもここにいるわけにはいかないので、おれもそこをあとにした。
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