SMILE!
2 side.六
台所で晩御飯の準備をする八の後ろ姿を見る。
俺がカレーがいいって言ったら、八が作ってくれるらしい。料理をする八を眺めた。
ほんと、八と会えるとは思ってなかったな。
告白かぁ…
八、誰かと付き合ったりすんのかな。そりゃあ八だっていつかは恋人が出来るんだろうけど
俺は八の親友で、その関係は変わらないと思っている。
だけど、さっきから胸がもやもやしている。
「はちー、」
胸のもやもやは無視して、台所に立つ八に後ろから抱き着く。
「っうわ…、六危ないだろ」
「んー」
「…んー、じゃなくて…」
肩に顎を置いて、八の腹に腕を回す。
…ちくしょう、大きくなりやがって。中学ん時は俺の方が、遥かにデカかったのに。
「……六、邪魔」
「俺の事は気にするな」
「…無理だろ」
八は苦笑して、鍋に入ったカレーをゆっくりと掻き混ぜる。
邪魔とか言いながら、俺をそのまま抱き着かせている。
八が笑ってる。
初めて会った時からは考えられないくらい。
笑えていても、八には乗り越えられない事があって……たぶん八の側に俺がいても無理だ。
「…六、もうすぐ出来るからな」
「おー。なんかお母さんみたいだな、八」
「…六みたいな、子供やだ」
「なんだと!」
目の前にあった八の耳に息を吹きかけた。
「…っ…、六ッ!」
バッと後ろを振り向いた八の顔は赤く染まっていた。
「ははっ、八顔赤いぞ」
「…カレーいらないみたいだな」
「すいません!いります!」
友達はたくさんいても、親友は八だけ。八がいれば、それでいいと思える。
胸のもやもやは、八に触ると消える。今の俺はそのもやもやが何かという事に気付いていなかった。
.
[まえ][つぎ]
[戻る]
無料HPエムペ!