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SMILE!
2 side.桐也



八が笑った。
見た事もないような笑顔だった。
それはオレ達に向けられたものじゃない。新しく来た教師に向けてだ。

弥永と食堂に向かう八の後ろ姿を黙って見送る。
何も言えなかった。あんな八を見るのは、初めてだった。


「理事長、弥永って八と親友って言ってましたけど」


理事長なら知っているだろうと思い、そう聞いた。


「八君と弥永君は中学が一緒なんだよ。中学からは全く会ってないみたいだからね」

「そうですか」

「八君にとってはとても大切な人だよ彼は」


理事長だからこそ、分かる事だろう。理事長をふと見ると、嬉しそうに微笑んでいた。
誰よりも長く一緒にいた理事長だから出来る表情。オレはまだ無理だ。


「じゃあ私は仕事があるから、戻るよ」


それだけ言って理事長は体育館を出て行った。なんとも言えない空気がオレ達の間に流れる。


「勝てる気しないにゃー」


突然聞こえた声。
声のした方を見ると、佐々が端の方に座り込んでいた。


「お前いつからいたんだよ」


ため息をつき聞くと、佐々はずいぶん前からだと答えた。


「さてさて、八くんの所に行くかにゃあ」

「は?お前八ん所行くのかよ」

「だって気になるし。君達はいいの?取られちゃうかもしれにゃいよー」


くすりと笑った佐々は足早に去って行く。


「俺も行きます」


半木も走って行ってしまった。
それに釣られるように全員動き出す。


「桐也、行くの?」

「…行くしかねぇだろ」


気になるのは事実。
でもあんなに楽しそうにしている八を邪魔出来ないと思った。



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あきゅろす。
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