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SMILE!
親友



驚いて身体が固まった。六が目の前にいる。
手が震えた。呆然と六を見ていると、六が唐突に聞いた。


「好きな数字、なんですか?」


一瞬、思考が停止した。
でもその言葉で確信した、六はおれの事覚えてる。じゃなきゃこんな事聞かない。
約束したおれと六だけの暗号

―好きな数字はなんですかー?って聞かれたら14って答えろよ

―何で14なんだ?

―俺とお前を足した数だから

おれと六しか分からない秘密の暗号。八と六で、14
目にうっすらと涙が溜まる。泣きそうだ。
おれは震えた声で言った。


「…じゅう、よん…」


それを聞いた六はあの時と変わらない笑顔を浮かべる。


「俺も14」


何も変わってない、あの時と。
目の前にいるのはおれの大切な親友。


「八、会いたかった」


その言葉に、おれは六に勢いよく抱き着く。


「っうお」

「…六、むつ…、おれも会いたかった」

「馬鹿、お前何泣きそうな顔してんだよ」


六が親指でおれの目元を乱暴に拭う。


「…痛い、」

「我慢しろ。つーか八、お前俺より身長高くなってんじゃねぇか」

「…六が低くなったんだろ」


くすりと笑うと六にぎゅっと頬を握られた。


「っ痛い、痛い…!」

「お前が悪い」


こんなやり取りが出来るのは六だけ。
笑って六を見ると、六も笑う。


「八君と弥永君、知り合いだったのかい?」


ふと横を見ると良仁さんがいて、おれは六から離れた。


「……おれの、親友です」


そう言うと良仁さんは納得したような顔をする。良仁さんには六の事、少しだけど話していた。


「ああ弥永君がそうだったのか。驚いたよ、八君が珍しくはしゃいでたから」


微笑む良仁さんに少し恥ずかしくなった。おれはそんなにはしゃいでいただろうか…

会えたのが偶然だとしても嬉しかった。もう一生会えないと思っていた親友に会えた。それだけで幸せだ。


「八に会えたの理事長のおかげなんだよ」

「…そうなのか?」

「元々、弥永君はここの姉妹校に行く予定だったんだけど、こっちに来てもらったんだ。まさか、弥永君が八君の親友だとは思ってなかったけどね」


本当に偶然だ。そう思って隣にいる六を見ると、六もこっちを見ていて目が合う。
六は笑って言った。


「やっぱり運命だな」


―俺と八が出会った事は運命なんだよ

前も六は運命だと言っていた。偶然なんかじゃなくて運命。六が運命だと言うなら、おれもその運命を信じるよ。


「久しぶりに会ったんだから、二人で話したらどうだい?今日は学校も昼までだからね」

「理事長いいんですか!」

「構わないよ」

「よっしゃあ!八、とりあえず飯食うぞ!」


六はおれの手を取り、歩き出す。
何年ぶりだろうか、こうやって六の隣を歩くのは。やっぱり六の隣は安心する。


「…六、食堂の場所知ってるのか?」

「知らん。だから、八に道案内させようと思ってるんだけど」

「…仕方ないな」


六の手を引いて少し前を歩く。


「うわ、すげー上からなんですけどー」

「…六は新人だろ」


くすくすと笑う。
楽しかった。ただ話したり、からかったりする事が何よりも。
中学時代に戻った気がして、おれは浮かれていた。そんなおれを皆が、どんな顔をして見ていたかなんて、おれは知らない。



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あきゅろす。
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