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SMILE!
二学期



夏休みはすぐに終わってしまった。夏休みの半分程は病院で過ごし、それからは良仁さんの家で過ごした。
傷もほとんど治ったし、普通に歩けるようになった。ただ、手と足の傷痕ははっきりと残ってしまったけれど。
良仁さんの家族にも会えた。
いつものように優しくて、嬉しかった。夏休みが終わる前日に学園に帰って来たら、おれの焼けた家と温室が綺麗に直っていた。
シマも家の中にいて、安心した。夏休みの間は真樹先生が世話をしてくれたらしい。あとでちゃんとお礼を言わないと。

今から始業式がある。
行こうと思う。
本当は少し怖かったりする。あんな事があった後だから、余計に。でも、前に進むためには行かなければいけないと思う。
体育館に行くと、もう始業式が始まっていた。端に真樹先生がいたので、そこに向かった。


「ああ、はっちゃん来たの?」

「……はい。あの、シマの事ありがとうございました」

「どういたしまして」


くしゃりと頭を撫でられた。


「そういえば新しい先生来るんだって」

「……そう、なんですか?」

「うん。ほら楢木先生が辞めたでしょ?だから補充」


…そうか、楢木先生が辞めたから、新しい先生を。優しい人だといいけど。といっても、あまり関わらない。


「桐也はもう会ったって言ってたわ」

「……真樹、先生は?」

「あたしはまだ。情報によると、はっちゃんと同い年なんだって」


おれと同い年、
同じ歳なのに教師、すごく頭良いんだろうなと思った。当たり前だけど、おれとは全然違う人生を送ったんだろうな。


「今から挨拶みたいね」


真樹先生の言葉にステージを見ると、スーツを来た男の人が中央に立っていた。顔が整っていて、生徒に人気が出そうだ。

…あれ…?何か、どこかで見た事あるような気がする。いや、気のせいか…?
じっと見ていると、その人がマイク越しに挨拶をし始めた。


《はじめまして、弥永六です》


いよなが、むつ
その名前におれは言葉を失った。
…うそ、嘘だ。なんで、六が、
弥永六という名前はおれの親友と同じ名前だった。
同姓同名だと思った。だけど、よく見たらステージに立つ男の人は明らかに六で、胸がぐちゃぐちゃになる。
会いたいと思っていた。でも、いざ目の前にすると怖くなった。
おれは六の事を覚えているけど、六がおれの事を覚えている確証はない。会うのが怖い。
ステージにいる六が何か話していたけど、全く入ってこなかった。
六の挨拶が終わり、始業式が終わった後もおれはその場から動けなかった。
信じられない、六が今ここにいる事が。


「はっちゃん?どうかした?」

「……あ、いえ…何でもない、です」


首を振ってそう伝える。
きょろきょろと体育館を見回す。ぞろぞろ体育館を出て行く生徒の向こう側に良仁さんと話す六の姿が見えた。
ほとんどの生徒が体育館を出て行き、六の姿がよりはっきりと見える。
やっぱり六だ。


「八さん!」


ポンと肩を叩かれ、そっちを向くと鈴がいた。
後ろの方には生徒会と風紀の皆も。隠岐達、紅は始業式にすら出ていないようだ。


「……鈴、」

「久しぶりです。怪我はもう大丈夫ですか?」

「…ああ、大丈夫だ」

「そりゃ何よりだ」


加賀谷が近寄って来て、ぽんぽんとおれの頭を軽く叩く。
この場所に、戻って来れてよかった。そう思っていたら、後ろから肩をを叩かれた。
振り向くと、そこに六がいた。



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