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SMILE!
2



泣き止んだ矢沼の目元は少し赤くなっていた。


「……大丈夫か?」

「…う、あ、はい…」


すいませんとぺこぺこと何度も頭を下げる矢沼を止める。


「…謝るな」

「…はい、す、すみません…」


また謝った…
矢沼本人は謝った事に気付いていないようだった。矢沼は謝るのが癖になっているみたいだ。


「あ、あのっ、お俺…、諦めませんっ」

「…え?」

「い今は、無理なんですよね…?だったら、え江夏さんがいいって言うまで俺っ待ちますっ!」


何で皆待ってくれるんだろう。待つだけなんて、きっと辛い。
それを待たせているのはおれ自身だけど。
本当は待たせたくない、おれは待つのが嫌いだから。でも、おれの中に答えがない。

皆の中に、諦めるという選択肢は無いのだろうか?
本気でおれの事が好きだから?待っていてくれる?


「おっ俺の事、好きになってもらえるようにがんばりますからっ」


りんごのように顔を染めた矢沼はじっとおれを見て、そう言った。
純粋な気持ちが眩しく感じた。


「あのっ、だから、江夏さんの事、すっ、すす好きでいても、いいですかっ?」


おれは矢沼のその問いに、ただ頷くしかなかった。

嬉しそうに笑う矢沼と共にグラウンドに戻る。矢沼弟は目元が赤い矢沼を見て、ニヤつく。


「フラれたか、兄ちゃん」

「っ違う!今は無理って言われただけだっ」

「それをフラれたって言うんじゃねぇの」

「………違う。諦めたわけじゃないし、」

「ふーん、頑張れよ兄ちゃん」


矢沼は言われなくも、と弟に言い返した。



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