SMILE!
今は
矢沼と校舎裏にきた。
遠くから歓声が聞こえる。
「……矢沼、さっきの、」
「っ好きです…!」
顔を赤くした矢沼は真剣な目をして、おれを見ている。赤くなるほど、手を握り締めていた。
「お、俺っ、江夏さんが好き、なんです…」
「……おれ、は」
こんな時、何て言えばいい?
分からない。相手を傷付けないようにしたい。
真樹先生と鈴は、待ってくれると言ってくれたけど矢沼はどうだろうか?はっきり言った方がいいのかもしれない。今は、無理だと。
「…江、夏さんは、俺のこと…どう、思ってますか…」
「……悪い。今は、矢沼の気持ちに、応えられない」
それが今の気持ち。
今は誰の気持ちにも応えられないし、応えるつもりもない。
「……すまな…―、えっ」
矢沼はボロボロと涙を零して泣いていた。
ど、どうしよう…泣かせてしまった。
「…え、あ…や、矢沼、ごめ」
「ち、違っ…江夏さんの、せい、じゃ…ない、です…っ」
俯いた矢沼の目から、ぼたりぼたりと涙が溢れている。
「っわ、わかって、たんですっ、俺じゃ、無理っ…だって…、相手に、されないって…!」
矢沼の気持ちが痛い程、伝わってきた。
「迷惑かも、しれないって…思ってた、んですっ…だけど、好き、なんです…、すみませんっ、ごめんなさい…っ」
「…謝らなくていい。おれは、矢沼に好きだって言われて嬉しかった。おれは何も出来ないのに、」
ゆっくり顔を上げた矢沼の頬は涙で濡れている。
今も涙が流れている。
「っ江夏さん、だから…、江夏さんが、いたからっ、俺は今ここにいるんです…っ」
おれがいるから、か
少し大袈裟な感じがしたけど、嬉しい気持ちの方が大きかった。
「…ありがとう。おれを好きになってくれて」
ありがとう。
こんなおれに好きだと言ってくれて。
「っぅ、ごめ、んなさ…本当に、好きです、っ大好き、です」
「…ああ、ありがとう」
そっと、矢沼の頭を撫でる。
ありがとう、
その言葉しか言えない
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