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SMILE!
2



「そういえば、兄ちゃんは何に出んの?」


おれも聞いてなかった。
誰が何の競技に出るのか


「俺は借り物競争」

「へぇ、兄ちゃんが借り物競争か…何も起こらないといいけど」

「ど、どういう意味だよ!」

「兄ちゃんドジだし、弟として心配してやってるんだよ」


余計なお世話だ!と顔を真っ赤にして矢沼は弟の頭をバシバシと叩いていた。


「……鈴は?」


仲良し兄弟を放置して、鈴に話し掛ける。


「俺は100メートル走です。絶対一位になるんで見てて下さいね」


それと、とおれの耳元に顔を近付けた鈴はそのままそこで呟く。


「一位になったら、キスしてくれませんか?」

「…へ、」

「約束ですよ」


文句を言う前に約束までさせられてしまった。軽く睨むと、鈴は笑っておれの頭を撫で下ろす。


「……なんか、ずるい」

「はは、すみません」


笑う鈴は幸せそうで、それ以上の文句は言えなかった。


「兄ちゃん、依鈴さん、開会式もうすぐみたいッスよ」

「じゃあ武伊、行くか。八さんまたあとで」

「え、え江夏さん、ま、また!」


二人に手を振って、見送った。
矢沼弟も中等部専用の席に戻るのかと思ったら、おれの手を引いて本部テントから少し離れた所に座り込んだ。


「……戻らなくていいのか?」

「めんどいんで。それにちゃんと座ってる奴らは高等部のファンッスからね」


中等部の席から離れた場所にいる生徒を指差して、俺の友達ッスと手を振る。
向こうも気付いたらしく、こっちに怠そうに手を振ってきた。


「大変ッスねー」

「……何が、だ?」

「江夏さんと一緒にいると、視線が痛いッス…」

「……は?」

「いろんな人に好かれてるって事ッスよ」


にこりと笑う矢沼弟。
視線が痛い事と人に好かれてる事は全く関係ないだろと首を傾げていると、矢沼弟は笑った。


「兄ちゃん、本気で頑張らないと無理だろ。ライバル多いみたいだし」

「……おれの話…?」

「そうッス、江夏さんの話ッス」


どういう事か詳しく聞こうと口を開いた所で開会式が始まり、開いていた口を閉じた。



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あきゅろす。
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