SMILE!
体育祭
体育祭当日、グランドには高等部の生徒はもちろん中等部の生徒も集まっている。
本部テントの後ろにいると、ジャージを着た中等部の生徒がこっちに向かって歩いてきていた。
誰かに似ている気がした。
その中等部の生徒は本部テントの後ろまで来ると端の方にいる矢沼の肩を叩く。
「よ、」
「武汰!久しぶりだな」
むた?知り合い?
楽しそうにしているし、結構仲がいいんだろう。
じっと、二人を見ていると矢沼と目が合う。その途端、ボフンと一瞬で真っ赤に染まった。それを不思議に思ったむた、という生徒がおれと矢沼を交互に見る。
「あーもしかして、江夏さんッスか?」
突然の問いに戸惑ったが、頷いておいた。
「どうもはじめまして。矢沼武汰っていいます、弟ッス」
「……弟、」
確かに似てる。
でも矢沼と違って、弟の方は少し不良っぽい気がする。不良っぽいわりには礼儀正しい。
「うちの兄ちゃんが世話になってるみたいっすね」
「……いや、」
そんなに世話してるつもりはないが…
「兄ちゃんいつも江夏さんの話ばっか―」
「む、むむむ武汰ッ!!余計な事言うなっ!」
真っ赤な顔で、矢沼は弟の肩をガシと掴み、揺さ振った。
「わ、わ分かったから、離せ。相変わらずヘタレだな兄ちゃん」
「っう、うるさい!」
仲良しなんだなと微笑ましく見ていると、鈴が寄ってきた。
「武汰来てたんですね」
「…ああ、少し前に」
鈴に気付いた矢沼弟はペこりと頭を下げる。ちゃんとしてるんだなこの子、と感心していた。
「依鈴さん、お久しぶりッス」
「ああ。そういえば武汰、お前ずっと寮抜け出してるそうだな」
「それは仕方ないッス!陽次さんが待ってるんで!!」
「誰だよ」
鈴が呆れたように言うと矢沼弟は尊敬してる人ッス!と目を輝かせていた。
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