SMILE!
2
「杏、本当なんですか」
岩代は少し悲しそうな顔をしていた。ずっと一緒にいたのに、気づけなかった、知らなかったから岩代は悲しそうな顔をしているんだろう。
「…うん、ホントの事だよ。今まで言えなくてごめん。…火事もボクがやった」
ごめんと何度も謝る香西。
「ふざけるな」
バンッとテーブルを拳で叩く加賀谷は香西を睨みつけた。
「何で言わなかった、オレ達は頼りないか?お前の支えにはなれないか?」
「っ違うよ!そうじゃなくて、ボクが弱い、から…嫌われたくなかったから……言えなかったの」
まるで、おれ自身を見てるみたいだった。
嫌われたくなくて何も言えない。きっとおれは香西より弱い
「馬鹿が、友達だろうが。簡単に嫌いになんかなるかよ」
「そうですよ、杏」
「っごめ…、さーちゃん、ひーちゃん、皆ありがとう」
加賀谷と岩代の言葉に香西は涙を流した。
こんなに想われている香西が羨ましい。おれにも加賀谷達のような友達がいたら、よかったのに。
まあ今は、にゃーにゃーうるさいおしゃべりな友達がいるから、いいのかもしれない。
香西の話が終り、皆の視線がおれに集まった。
「八くんの番だにゃ」
おれの番といっても、正直話す事がない。何を言おうか考えていると、桐也先生が口を開いた。
「お前らはどうするつもりなんだ?鶴岡がどこにいるか分からないのにお前らはどうやって解決するんだ」
「探すしかないだろ」
桐也先生の問いに加賀谷が答えた。鶴岡を探し出す事が今は少し無謀に思えた。だって何も情報がないのだから。たぶん、元べに様の香西すら知らない。
闇雲に探したって意味がない。
もしかしたら鶴岡はそれを狙っているかもしれないし。結局、なんの方法もない。
「とにかく、貴方は一人にならない方がいいですよ」
「そうだね、はっちんに危ない目にあってほしくないし。僕頑張って鶴岡の居場所探すからね」
岩代と黒川はおれのためにそう言ってくれてるのはわかってる。
だけど、やっぱりおれは動くな、じっとしていろ、と言われている気がしてならない。
誰か一人でもいいから、協力してくれと言ってほしい。おれじゃ役にたたないかもしれないけど。
「馬鹿犬、言いたい事あるなら言え。黙ってるだけじゃわかんねえだろうが」
「八くんスッゴく不満そうな顔してるにゃ」
「え、」
隠岐と流星に言われて初めて気付いた。
そんな顔をしていたつもりはなかったが、はたからはそう見えていたのか。…気をつけよう
話さなきゃ伝わらないのは分かっていたのに、おれはいつも黙ってばっかり。
変えなければ、この性格を。
「……おれは、守られてばっかりは、嫌だ」
喧嘩もした事ないし、弱いけど、男なんだ。
守ってもらわなきゃいけない時もあるかもしれない。だけど、出来るだけ自分の身は自分でどうにかしたいと思うんだ。
おれ一人じゃ、何も出来ない時だってあると思う。そういう時は、協力してほしい。
ぽつりぽつりと俯きながら言う。皆黙って聞いてくれていた。
全てを話し終り、ゆっくり顔を上げると、反対側に座る流星と目が合い、笑って頷いてくれた。隣に座る桐也先生も真樹先生も、皆頷いた。
それが嬉しくて、ほんの少しだけ口元を緩めた。
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