SMILE!
2
少し開いた唇の隙間から、舌が入ってきた。咥内を動き回る舌に、ゾクリと背中に何かが走る。
「…っん…ン、」
鈴の腕を握る。
それに気付いたのか鈴はおれの後頭部を押さえて、更に深く口づけてきた。
息ができない。苦しくて、鈴の胸を叩く。
しばらくして鈴はやっと離れてくれたが、身体に力が入らず鈴に縋り付く体勢になってしまった。
「もっと早く伝えておけばよかった」
「…え?」
「伝えていたら、隠岐とも佐々ともあんな事にはならなかったのかなと思ったんです」
何も言えなかった。鈴の気持ちを知っていても、おれは鈴を傷付けてしまいそうだから。
「……悪かった」
ただ謝るしか出来ない。
知らなかったとはいえ、傷付けていたんだ。
「…鈴を、傷付けた」
「でももう分かってくれましたよね。だからいいです」
ニコリと笑った鈴を見て、おれは少し泣きたくなった。仲直り出来たんだと
「……ありがとう」
ぎこちなく笑い返すと鈴はおれを抱きしめた。
「待ってます。八さんの気持ちが定まるまで、ずっと待ってます」
「……鈴、」
「本当は今すぐ答えがほしいんですけど、断られそうなんで我慢します」
真樹先生も待つと言ってくれた。だけど、おれに好きな人なんて出来るんだろうか?
ずっと待たせる事は出来ない。いつかは答えを出さなければいけないのだ。
「俺が卒業する時までに答えをください。それまでは待ちます」
鈴の言葉に頷く。
だけど、多分もっと早く答えを出さなければいけない気がする。
きっと、隠岐達が卒業するまでには。
「……わかった。必ず、答えるから」
「イエスの返事しか受け付けませんからね」
「……え、」
「冗談です」
クスと笑う鈴を見て安心する。元通りの関係に戻れたわけじゃないが、こうやって話す事が出来る。
それだけでおれは満足だった。
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