SMILE!
3
…せめて和泉に対する気持ちくらい、自分で伝えさせてあげればよかったのに、おしゃべりな奴だ。
と思っていると、流星の腕が首に回ってきて軽く首を絞められた。
「…っぐ、ぅ」
「八くーん?今、何考えてたのかにゃ?僕がおしゃべりなのは、分かってる事でしょー?」
「……はい、」
何で分かったんだ…
おれの心の中まで流星は見通してるみたいだ。
流星とそんな会話をしている内に和泉と香西が話し始めていた。
「…退学にでも、するの…?」
「いや、退学にはしない。被害を受けた本人はそれを望んでいないだろうからな」
和泉と目が合い、頷く。
退学になどする必要はない。
「しかし、処分は受けてもらう。そうだな、一週間の停学…で、どうだ?ハチ公」
「…おれは、かまわない」
そう和泉が決めたのなら、文句はない。
「停学の期間は体育祭が終わってからの一週間だ」
「え?今日から、じゃないの?」
「この忙しい時期に役員を減らす事は出来ない。それに高校最後の体育祭だ、楽しむ権利は誰にでもあるからな」
微笑む和泉に香西は、涙をこぼした。
この和泉の優しさに香西は、惚れたんだろう。
少し羨ましく感じた。いつかおれも香西のように人を想う日が来るのだろうか?
「…っあ、ありがと、う…」
頭を下げて、お礼を言う香西の頭に和泉はポンと手を置く。
「頭を上げろ。……それと香西、すまないが、お前の気持ちには答えられない」
和泉の言葉に、香西はピシリと固まった。
その後ろ姿が弱々しくて、頭を撫でたい衝動にかられたが今おれが割って入るわけにはいかない。
「すまない」
謝る和泉に香西は首を振る。
「…いいの、分かってたこと、だから。……あの、こんなこと、しておいて図々しいんだけど、」
香西の口調から、緊張している事がわかった。
「…これからも普通に、接してほしい…」
香西の願いに和泉は笑って、もちろんと頷いた。
一緒に過ごしてきた仲間だから、そう簡単にこの関係は崩れないんだろう。
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