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SMILE!
香西杏



朝、佐々と一緒に部屋で軽く朝食を取ってから、おれの家に向かった。
無残に姿を変えてしまった家。
朝見たら、余計酷く感じた。じっと焼け焦げた家を見ていると、流星に肩を叩かれた。


「八くん、来たよ」


流星が示す方を見ると、香西が俯き歩いて来ていた。


「……香西、」


声をかけると香西は顔を上げておれを見たあと流星を睨みつけた。


「…どういうこと?」

「八くんに頼まれたから、呼んだんだにゃー」


そう言って流星は少し離れ、おれと香西の二人だけにする。


「……香西、」

「…なに」

「…お前が、やったのか」

「だったら、何」


その言葉に、おれは思わず香西の頬をぶった。
香西は驚き、目を見開いて唇を噛む。少し、瞳が涙で滲んでいたが気にしてられない。


「…ここは、大切な場所だったんだ」


今までの思い出が詰まった大切な場所。それを壊されて、簡単に許すことなど、できない。


「…べに様に脅されたからって、それは理由にならない。ただの言い訳だ」


こんな事せずに、べに様の正体を教えてくれればよかった。
べに様だったから、たったそれだけの理由で和泉が香西を嫌いになるわけないのに。


「…べに様だったからって、和泉は香西のこと嫌ったりしない」


香西は驚いたようにおれを見た。全部、流星から聞いたと呟くと香西は手の平に爪が食い込むほど強く握り締めた。


「…っ、アンタに何が分かるっていうの!?」

「……何も分からない。香西のことは何も知らないから。分かってほしいなら、自分から言わなければ相手にも伝わらない」


これはおれ自身にも言えること。
怖いから、嫌われたくないから、相手に伝える事が出来ない。その香西の気持ちは痛い程、分かる。


「…和泉の事、おれは少ししか知らないけど…、今まで付き合ってきた人を嫌いになったりはしないと思う。香西はちゃんと分かってるんじゃないのか…?」


好きだから、おれよりも和泉の事を知っているだろう。
きっと、誰よりも。


「……ボクは、」


ぽろりと香西の瞳から、涙がこぼれ落ちる。


「…おれは、香西を許すことは出来ない。失ったものは…戻ってこないから…」

「…っご、めんな、さい、」


ごめんなさい、ごめんなさいと、頭を下げて何度も謝る香西に近付き、小さな頭にそっと触れる。



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