SMILE!
情報 side.晃雅
理事長室を出ると、加賀谷と和泉、楢木がいた。
「楢木、俺と来い」
それだけ言って開いていたエレベーターに乗り込む。後ろから、目に覇気のない楢木がゆっくりとエレベーターに入って来た。
「ちゃんと聞き出せよー」
加賀谷のその言葉を聞いて、エレベーターの扉を閉めた。一階のボタンを押すとエレベーターが動き出し、嫌な浮遊感が身体を襲う。
「おい楢木、お前アイツに何をした」
楢木が行った事は全て知っているが、あえて聞いた。
コイツの口から聞きたかった。
「…わ、私は…ただ、あの人のために…」
「べに様、か」
その名を出すと楢木の肩が微かに震えた。
やはり、コイツはべに様の命令で動いていた。それならば、べに様の正体を知っていてもおかしくはない。
「知っている事を全て言え」
睨みつけると、楢木は慌てて首を振った。
「し、知らないっ」
「あ?ふざけんじゃねえよ、お前はアイツに会ってるんだろ?知らねえで済むと思ってんのか」
ガンッとエレベーターの壁を殴りつけると、楢木は怯え震えながら、口を開いた。
「っ、会った、事はある…だが、名前を知らないっ」
「知らねえだと?ふざけた事言ってんじゃねえよ」
「…っ、ほ、本当だ…!信じてくれッ」
コイツを信じるワケじゃないが、この学園は無駄に生徒が多い。
それにコイツは、三年の授業を担当しているから、二年と一年の生徒を把握してないのも頷ける。
という事はべに様は一年か二年。
「おい楢木、べに様の学年くらい分かってんだろ?」
楢木のすぐ横の壁を蹴ると、大袈裟なほど肩がびくついた。
「った、たぶん…一年だ…!」
「どんな奴だ」
「…黒髪で、綺麗な顔をしていたからっ、人気のある生徒だと思うっ。わ、私はっ、それくらいしか分からない!!」
一年で黒髪、綺麗な顔。こんな奴、一年の中には何十人だっているだろ。
情報はこれだけか?
「本当にそれだけなんだな?嘘なんかついてみろ……どうなるか分かってんだろうな?」
「っ信じてくれ!……そ、そういえば、私が江夏を…襲う前に、べに様は、江夏と話していた」
あ?馬鹿犬と話していた?
べに様が一方的に話しかけていたワケじゃなくか…?
「江夏八はべに様に会った事があるって事か?」
「っ、あぁ!…初めて会った感じでは、なかった」
べに様自ら、ターゲットに接触していたとはな。いや、もしかすると俺達にも接触していたのかもしれない。
「…虚仮にしやがって、殺すぞ」
思いっきり壁を殴りつけ、ここにはいないべに様へと呟く。
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