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SMILE!
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静かに理事長室を出て行く楢木先生を追って、和泉くんも出て行った。
まだ楢木先生には聞かなければいけない事があるからね。べに様の事とか。でもそれは私の仕事ではないから。
それにまだ隠岐くんと加賀谷くんと話があるから。


「君達は言ったよね?必ず探し出すから、私には手を出さないでほしいと」


矢野榊、この生徒が一番べに様という存在に被害を受けた。
その当時、私ははっきり言ってべに様という存在を詳しく知らなかった。それに矢野くんの事件が起こるまで、比較的学園内は平穏に包まれていた。
そして、矢野くんの事件が起き、そこでやっとべに様がどれだけ危険な人物なのか、知った。
それから、私はべに様制度を無くそうとした。だが、べに様が誰か分からず、どうする事も出来なかった。
全校生徒の前で、べに様制度を廃止する、と言っても止まるはずがないのだ。理事長の私は無力だった。力の無さを痛感した。

そのあとすぐに、隠岐くん達が入学してきた。入学当初、隠岐くんが紅を創った時に言った。
理事長が手を出しても無意味だから、俺達に任せてほしい。必ず見つけ出す
それを了承した。

私が手を出しても無意味。その理由も分かっていた。
理事長や教師が生徒をずっと見張る事など出来ないし、私がべに様制度を廃止しても裏では変わらない。
見えない所で動き続けるだろう。だからこそ、生徒である隠岐くん達に一任した。生徒の方が自由に動ける。


「理事長、楢木は何かしら、べに様について知っています。だから、必ず見つけ出します」


加賀谷くんは真剣な目をしていた。それは隣にいる隠岐くんも同じだけれど。


「信頼しているよ」


だからこそ任せられる。


「だけど、早くしなければならない。あの子が傷付くのは見たくないんだ」


そう言えば二人は深く頷いた。


「それと、加賀谷くんと和泉くんは反省文書いてね」


今までの雰囲気を塗り替えるようにニッコリと笑うと、加賀谷くんは真面目な顔から一気にげんなりとした顔になった。


「…わかりました。上総にも伝えておきます」


加賀谷くんは一礼して、理事長室を出て行った。残った隠岐くんは私を見て、唐突に謝った。


「…すみません」


何となく隠岐くんが謝る理由が分かった。だけど、隠岐くん…謝る相手が違うし、八くんが傷付いたのは君だけのせいじゃないよ。


「隠岐くん、君はまだ高校生だ。何もかも一人で抱え込まなくてもいいんじゃないかな。たまには皆と協力してみるのもいいと思うよ、私は」


無言で深く頭を下げ、隠岐くんは理事長室を出て行った。
性格は全然違うけど、八くんと隠岐くんはちょっと似ているかもしれない。自分の言いたい事、言えない所とか。

さて、そろそろ八くんの所に行こう。



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