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SMILE!
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唇を噛み締めた楢木先生は、私を睨みつける。
まだ反抗する気があるのか。この状況でまだ反抗するなんて、ある意味尊敬するよ。
和泉くんが持ってきたカメラには、たっぷり証拠が撮られていたし逃げる事は出来ない。ああ、最後の足掻きってやつかな?


「理事長は、アイツを特別視し過ぎだっ!!」

「それが何か?」


八くんを特別視しているわけではなかったが、他人からそう見えるのならそうなんだろう。
大切な子なのだから、特別視して何が悪い。出来るだけ平等に扱っているのだけど、どうしてもあの子には構ってしまいたくなる。
楢木先生は膝に置いていた手を握り締め、ぼそりと呟く。


「…っあんな奴、殴らて当然だ。あんな奴……、死ねばいい…」


楢木先生のその言葉に、冷めた頭に血が上った。手をつけてない生温くなったコーヒーを手に取り、楢木先生に勢いよくぶっかけた。


「ああ、すみません。手が滑ってしまって」


本当は私だって殴りたい。だけど私は理事長だ。これ以上は手を出す事は出来ない。
でも、加賀谷くん達が殴って出来た傷にコーヒーがしみて、倍痛いよね。
ぽたりと楢木先生の髪からコーヒーが流れ、ソファーに落ちる。


「貴方は人として最低な事をしている」

「…っわ、私は、」


俯き微かに、肩を震わせる楢木先生。
今更後悔しても遅い。貴方がやった事は、取り消す事は出来ないのだから。むしろ、ずっとあの子の心に刻まれたままだろう。


「正式な処分は明日言い渡す」


ゆっくりと顔を上げた楢木先生を一瞥し、冷めた声でそのまま続ける。


「だけど、分かっているだろう?ここにいられない事くらい」


それが分からない程、馬鹿じゃないだろう。


「すぐにここを出て行く準備をしなさい。貴方は、この学園に必要ないよ」


本当は警察沙汰なんだろうけど、公には出来ない。公になれば学園の存亡に関わる。それだけは出来ない。
こういうのは嫌になる。
クビだけで済む事を感謝して欲しいくらいだ。ここを出れば、楢木先生の犯した罪を知る人はいないのだから普通に生活していける。


「二度と過ちを犯さないようにしなさい。それと学園にも二度と足を踏み入れないでください」


楢木先生はソファーから立ち上がり、深く頭を下げた。


「…申し訳ありません、でした」


貴方を簡単に許す程、私は優しくはないよ。



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