SMILE!
自信
「おいで」
手招きされて、良仁さんに近付くと頭を撫でられ手を引かれる。
「……良ひ…、理事長…?」
危うく名前で呼びそうになった。何か今は名前で呼んじゃいけない気がした。
「大丈夫だからついておいで」
良仁さんは理事長室の奥にある部屋に向かっている。良仁さんに促され、中に入るとそこは仮眠室のようだった。
バタンと扉が閉まると同時に、抱きしめられる。
「……よし、ひとさん…?」
「本当にすまない。また傷付いてしまった」
違う。
良仁さんが謝るのは間違ってる。
だから、そんなに悲しそうな声を出さないで。
「楢木先生に、暴行を受けていたんだろう?気付いてやれなくて、すまなかった」
暴行…、良仁さんは、楢木先生にされた事全部知ってしまったんだろうか。
「……良仁さん、おれ…楢木先生に、」
犯されて、殴られたんです。
良仁さん、知ってますか
「いい、言わなくていいんだよ、八くん」
おれよりも苦しそうな顔をする良仁さんを見て、ああもう、良仁さんは全部知っているのかと少し泣きたくなった。
気持ち悪いって思われたらどうしよう。犯されたおれを良仁さんは、見捨てないでいてくれるだろうか。
「……良、仁さ…置いて、行かないで、ください…」
声が震えた。拒絶されてしまったら、おれはどうすればいい?
唯一の家族が消えてなくなってしまう。怖い。
「どうしてそんな事言うんだい?私は八くんを置いて行ったりしないよ、絶対に」
「……だっ、て…おれ、汚っ、」
「八くん」
おれの言葉を遮る良仁さんは、少し怖かった。怒ってる。
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