SMILE!
3
「……いいえ、何もないです」
何かおれが悪い事したみたいな雰囲気になってる。何もしてないのに…
そんな事を思っていると、湿布を貼っている左頬が岩代の手に包み込まれた。
「……いわ、しろ…?」
「ちょっとなら手を出してもいいらしいので」
「……は?」
わけがわからず、ポカンとしていると岩代がくすりと笑った。
愛想笑いとかじゃなくて、本物の笑顔。
「鈍感ですね。今回はちょっとで済みましたけど、今度はちょっとじゃ済まないですよ?」
「……いや、何の話…」
「覚えておいて下さいね、八」
はじめて名前で呼ばれた。
ちょっと岩代に近付けたんだろうか?
「行きますよ」
いつの間にか、理事長室がある最上階に着いていて、岩代はさっさとエレベーターを降りた。おれも岩代について降りた。
久しぶりに来たこの階は相変わらず豪華だった。
理事長室の扉を岩代がノックすると、中から良仁さんの声が聞こえ、岩代が扉を開けた。
「失礼します」
中に入る岩代に続いて、おれも理事長室に足を踏み入れる。
「……失礼しま…す、」
良仁さんはもちろんいた…、だけど何故隠岐達もいるんだろうか。
てっきり、良仁さんだけだと思っていた。それに楢木先生がいる。和泉と加賀谷が連れて来たんだろうけど…
和泉に殴られた時より、ボロボロになっているのはおれの気のせいだろうか。
楢木先生に睨みつけられて、ビクリと肩を震わせると、隣に立っていた岩代がさりげなく壁になってくれた。
岩代のおかげで、楢木先生からの視線は感じなくなった。しかし、この状況とてつもなく気まずい。
「八くん」
「……っはい、」
沈黙の中、いきなり良仁さんに呼ばれ、驚いて少し大きめの声で返事をする。
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