[携帯モード] [URL送信]

SMILE!
程々に side.上総



依鈴がハチ公を連れて行ったのを見て、一沙が楢木の襟を掴んだ。


「一沙、ほどほどにしておけよ」

「分かってる」


はあ、と日向が肩を竦めてため息をついていた。


「大人のくせに卑怯な事しやがって、気持ち悪いんだよ、お前」


冷めた声で一沙はそう言い放ち、楢木を殴る。
ほどほどにしておけと言ったのに、一沙の奴は手加減なしだ。
私はちゃんと手加減……したぞ


「ぅぐぁッ……きょ、教師に、こんな事、してっ…いいと、思っているのかっ」

「はあ?」

「いくら、生徒会長、だからって、許されるはずがないっ!」


びくびくしながら、一沙に反抗する楢木の姿は滑稽だった。
あんな大人には、なりたくはないな。
そんな楢木を一沙は嘲笑い、また殴りつける。


「お前の事、教師だと思ってねぇよ。いいか、お前はここでも、社会的にもオレより下なんだよ。犯罪者が生意気な口聞いてんじゃねぇよッ!!」


一沙の最後の一発で、楢木は落ちた。
今から理事長の所に連れて行かなければいけないのに、気絶されたら、めんどくさいだろうが。
だから、ほどほどにしておけと言ったのに。


「やり過ぎじゃありません?」


日向は呆れた顔をして、一沙を見ていた。


「やり過ぎじゃねぇよ。むしろ遠慮した方だ。江夏八の分を考えたら、まだ足りねぇくらいだ」


確かに。足りない。
だが、私達が出来るのはこれだけ。あとは理事長が処罰を下す。


「一沙、お前が理事長室まで持って行けよ」


眼鏡を上げながら言うと、一沙は嫌そうな顔をしつつも頷いた。


「それで上総、僕を呼んだ理由はなんです?」

「ハチ公の手当てが終わり次第、理事長室に連れて来てほしい」


そう言うと、日向は眉を潜めた。まあ、言いたい事は分かる。何故、依鈴じゃ駄目なのか、という事だろうな。


「日向の方が都合がいい。依鈴はべに様の事をよく知らないしな」


しかし、今回の楢木の事も、依鈴はもちろん風紀、生徒会の連中には全てを話すべきだろう。その方が、何かと便利だ。


「それに、依鈴はハチ公に特別な感情を抱いているし、あんまり一緒にはいさせたくないだろう?」

「…なんだ、その理由。上総、お前、江夏八に惚れてるのか?」



[まえ][つぎ]
[戻る]


あきゅろす。
無料HPエムペ!