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SMILE!
4



「…す、ず…」


鈴はおれを安心させるようにぎゅっと手を握り締めた。


「依鈴、保健室に連れて行け」

「わかりました」


鈴に手を引かれ、歩くように促される。
当事者のおれが、ここを離れてもいいのかと思ったが、ここにいても出来る事なんてないし、今はおとなしく保健室に行こう。
それが今おれのやる事なんだ。


「……鈴、行こう」

「はい」


鈴と歩き出す。
加賀谷の横を通り過ぎる時、頑張ったなと肩を軽く叩かれた。
その声が優しくて、我慢していた涙が零れた。泣いているのがバレないように、俯いて歩く。
だけど、繋いでいた手が強く握られておれが泣いている事は、鈴にはバレバレだった。

校舎に入った途端、鈴はおれの手を引き、そっと抱きしめた。


「……っす、ず…誰かに、見られたら…」

「大丈夫です、今は授業中ですから。……それに今の八さんを、他の人には見せたくない」


殴られてない左頬を手で包み込まれ、鈴と目が合う。


「泣いていいですよ、俺しか見てません」


ふわりと笑った鈴はそう言った。おれはぐしゃっと顔を歪め、鈴の肩に顔を埋めた。

本当は泣きたくない。だけど、いろいろ押し潰されて限界だった。
苦しい、悲しい、怖い





―side.依鈴



声を出さずに泣く八さんの肩が震えていて、そっと背中を摩る。
楢木が八さんを殴った事は、あの状況で明らか。
多分、会長や上総先輩は全て分かっているんだろうけど、俺はまだ知らない。上総先輩の事だから、後で言うつもりだったんだろうけど…

それにしてもあのクソ教師、八さん殴るなんて死にたいのか


「……ん…、鈴…」


泣き止んだ八さんが肩から顔を離し、俺を見る。まだ目が涙で潤んでいて、ドキッと心臓が鳴った。


「……すまない…もう、平気だ」


無理に笑おうとする八さんは痛々しかった。
俺は八さんのそんな顔、見たくない。


「八さん、」


涙の跡が残る頬に口づける。
八さんの肩がびくりと震えた。


「…っす、ず…」


左にある泣きボクロにキスをして、八さんから離れた。少し顔の赤くなっている八さんが愛おしくて、堪らなかった。


「保健室、行きましょうか」


コクンと頷く八さんの手を取り、閑散としている廊下を保健室に向かって歩いた。



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