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SMILE!
3



勝手に身体が動き出していた。
楢木先生の目の前まで行き、涙の滲む目で睨みつける。


「お前が悪い!お前がいなければ、こんな事にはならなかった!その猫だって、そうだろう!」


おれがいるから、シマもこんな事になった。
それは間違ってない…だけどっ


「…っおれは、何も間違った事はしてない!」


誰かに恨まれるような事、おれはしてない。
ぎゅっと手を握り締める。初めて人を殴りたいと思った。
が、握り締めた手を大きな手で包み込まれて楢木先生を殴る事は出来なかった。


「……っ離して、くれ」

「駄目だ。ハチ公の手が傷付いてしまう、だから私がやる」


和泉はおれの手を離し、楢木先生の前に出た。
そしてバキと、


「…貴様に教師の資格はない」


和泉は楢木先生を殴った。楢木先生はその衝撃で地面に倒れ込み、呆然と和泉を見上げていた。


「上総!」


和泉を呼ぶ声が聞こえ、そっちに視線を向けると、加賀谷と岩代、但馬、鈴が走って来ていた。


「…但馬っ」


早く、と但馬を呼べば少し息を切らした但馬が倒れているシマを見て険しい顔になった。


「何があったん?ポチ、顔酷い事になっとるし」

「…おれの事は、どうでもいいっ、シマが…」


くしゃりと顔を歪めると但馬は、分かったとシマをそっと抱き抱えた。


「……大丈夫、なのか…?」

「俺じゃあんまり詳しい事わからへんけど、命には関わらんと思う。とにかく病院に連れてった方がええ」


シマは但馬の腕の中で、ぐったりしている。
本当に大丈夫なんだろうか…


「但馬、ハチ公の猫を病院に連れて行ってくれ」

「わかった」

「…おれも、行く」


そう言えば、但馬は首を振った。


「駄目や」

「…っなんで…!」

「自分の顔見てみ?酷いで?そんな顔でついて来ても、迷惑なだけや」


…っ、そうかもしれないけど、心配なんだ…


「大丈夫や、何かあったら連絡する。やからポチはちゃんと手当てしいや。ええな?」


じっと目を見つめられて、おれはゆっくり頷いた。
おれが頷いたのを確認すると但馬は校門の方へ小走りで行ってしまった。
唇を噛み締めて俯いていると、ぽんと頭に誰かの手が乗った。


「大丈夫ですよ、茉の所の病院、腕は確かですから」


顔を上げると鈴が微笑んでいた。



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あきゅろす。
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