SMILE! 3 「……ん…、」 「八君…?」 泣き疲れたのか、八君はいつの間にか寝息を立てていた。 起こさないようにそっと抱き抱えて、ベッドに寝かせる。 カタンと窓の方から小さな音がして、振り向くと猫が入って来ていた。 その猫は一直線にベッドに来ると寝ている八君に擦り寄り、鼻を舐めた。 「確か名前はシマ、だったかな。大好きなんだね、八君の事」 八君のすぐ隣に丸くなるシマを、撫でると気持ち良さそうに目を細め、喉を鳴らした。 「私が側にいれない時は、君に頼もうかな」 冗談混じりにそう言うと、シマは短く返事をした。 「いい子だね」 ちらりと八君を見ると、頬に涙の跡がついていた。それをなぞるように頬に指を這わせた。 「ごめんね、」 ぐっすり眠る八君に顔を近付け、そっと口づけた。 この感情は恋ではない。家族としての愛。それ以上の関係を求めようとは思わない。 八君が私に望むのは家族愛。 それならそれでいい。私もそれを望むよ。君と家族になりたいと思うから。 誰よりも君を分かっていたい。 支えて、もっと心の底から頼ってもらえるように。 「愛しているよ」 君を一番、愛してる。 顔にかかる八君の長い前髪をかき上げて、額にキスを落とした。 . [まえ][つぎ] [戻る] |