SMILE!
4
戻って来た木野はベッドに座るおれの前に立つと、おれの肩にかかっていたバスタオルを手に取る。
「ちゃんと拭け、風邪引いたらどうすんだ」
ぽたぽたと水滴が落ちるおれの頭を木野はわしゃわしゃとバスタオルで拭いた。
「………、」
「よし、こんくらいでいいか」
おれの頭を綺麗に拭いた木野は満足したように頷いた。
「次は背中、か」
木野は棚の上にある救急箱を取ると、おれの隣に座った。
「……木野…」
「どうした?」
「……いや、あの…」
なんとなくで、木野を呼んでしまった。特に何の理由もないのに。
「…ほら、前向け」
木野はおれの肩を掴み、前を向かせた。木野が背中の手当てをしている間、おれはずっとびくびくしていた。手当てが終わり、木野が口を開く。
「…江夏、言いたくないなら言わなくていいが、聞くだけ聞くぞ。…誰にヤられた?」
「……っ、ぁ」
あ、ああ、何て言えばいいんだろうか…
無意識のうちに身体が震えていたらしく、木野はおれを正面から抱きしめた。
「怖かったよな」
木野はおれの頭を肩に押し付け、ゆっくり髪をすく。
いまだに上半身裸のおれが寒いだろうと思ったのか木野はベッドの隅に畳んでいた布団を取り、肩にかけてくれた。
「……本当に、悪い。お前が、こんな目に合ったのも全部…オレ達のせいだ」
そんな、事…
おれ自身…こんな事になるなんて思ってなくて、甘かったんじゃないかと思う。
「……違う…」
「違わねぇよ。お前は何も知らねぇだろ」
…何も、知らない
じゃあ、木野は知っているんだろうか楢木先生の言ったべに様という人物を。でも、言葉が出て来なくてそれは聞けなかった。
「やっぱり言いたくないか?どんな奴くらいか教えてほしいんだけど」
木野は親衛隊の生徒に犯されたと思っているのか。ここで、楢木先生だと言ってしまえばいいんだろうか?
誰にも言うんじゃないぞ。自分の立場を分かっているだろう?と楢木先生が最後に言った言葉がおれを締め付ける。
「……言え、ない…」
木野のぎゅうっと腕を掴む。
苦しくて、悔しい
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