SMILE!
2
真樹先生と別れ、外に出ようと校舎内を歩いていると、近くの空き教室から、叫び声が聞こえた。
もう授業は始まっているはずだ。何だろうと思い、扉の隙間から中の様子を伺う。
「……鶴岡…?」
中には二人の生徒に囲まれた鶴岡がいた。鶴岡の服は乱れ、目に涙を溜め、明らかにまずい状況だった。
「やめてっ…誰か、助けてッ!」
鶴岡の泣き叫ぶ声が耳に入る。
迷ってる暇はないと、目の前の扉を開ける。
「あ?誰だよ」
鶴岡を囲んでいた二人が振り向き、おれを捉える。
「…っ江夏さん!」
隙が出来た二人の間を鶴岡が抜け出し、おれの方へ走ってくる。
制服はボロボロに破けていた。
「チッ、もやしかよ。うぜえんだけど」
「なんか一気に萎えたな、行こうぜ」
鶴岡を襲おうとした二人は、舌打ちして教室を出て行った。鶴岡は安心したのか、その場にしゃがみ込んだ。
「ほんと、に、ありがとうございます……っ江夏さんが、来なかったら僕っ…」
震える鶴岡の肩に手を置く。
今のおれにはこんな事しか出来ない。
「何をしている!」
二人の生徒が出て行った扉から、楢木先生が入って来る。おれと鶴岡の姿を確認すると楢木先生は、鶴岡を庇うように背中の後ろに隠した。
「貴様、この生徒に何をするつもりだった!?」
「……え、あの…おれは…」
疑われてるのか、
鶴岡の服はボロボロだし、疑われても仕方ない状況だろう
「せ、先生っ、違うんです!江夏さんはっ、」
「君は早く保健室に行きなさい」
「っでも!」
鶴岡は必死におれの誤解を解こうとしている。
「来なさい、話しがある」
楢木先生はおれを睨みつけ、そう言った。ここで逃げてしまえば更に疑われてしまうのでおれは一度頷いた。
「…わ、かりました」
「江夏さんっ」
心配する鶴岡に向かって、大丈夫だと一言告げ、歩き始めた楢木先生の後ろをついて歩いた。
ひとり空き教室に残った鶴岡がくすりと、
「いってらっしゃい、江夏さん」
笑った事におれは気がつかなかった。
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