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SMILE!
威嚇



「江夏さん!」


名前を呼ばれ顔を上げると、ぱたぱたとジャージ姿の鶴岡が走って来ていた。


「……鶴岡、」

「こんにちは」


コクンと頷くと、鶴岡はふわりと笑った。


「昨日の大丈夫でしたか?風大も悪気があったわけじゃないと思うんです…」

「……大丈夫だ。たいしたことない。…赤塚の事も、怒ってない」


そう言うと鶴岡は嬉しそうに微笑んだ。
鶴岡は優しい。わざわざこうやって、心配してくれて赤塚の事も考えている。
と心の中で思っていたら、突然シマが威嚇し始めた。シマの目線の先には、鶴岡がいてどうしたんだとシマの頭を撫でたがそれが止む事はなかった。


「……シマ?」

「ぼく嫌われちゃったのかな」


苦笑いする鶴岡。
シマはこんな事しないのに。人間が苦手でも、逃げたり、近付かないようにするくらいだ。威嚇するなんて事、今までなかった。


「……悪い」

「ぼく、あんまり動物は得意じゃないんです、だから大丈夫です。それよりこれ……親衛隊、ですよね…」


鶴岡は足元の花壇を見つめ、悲しげな顔をした。


「花が可哀相。ちゃんと生きてるのに。江夏さん大丈夫ですか?」

「……え、ああ」


そこまで心配してくれると思ってなくて、少し戸惑う。


「花壇全部…こうなってたんですか?」

「……ああ。でも、温室は無事だと思うから…」


温室の存在をあんまり知られていないし、大丈夫だろう。
というか、無事じゃなかったら……いや、無事だと思いたい。


「温室なんてあったんですね。ぼく知らなかったです」


鶴岡はまだ入学してまだ日が浅いし、知らないのは当然だ。


「つるおかー!」

「そろそろぼく行きますね。じゃあ江夏さん、また」


クラスメートに呼ばれた鶴岡は、ペこりと頭を下げて運動場の中央に戻って行った。
さっきまで威嚇していたシマは、抱っこしろと足に擦り寄ってきた。甘えるシマを抱っこするとシマはぺろぺろとおれの顔を舐めてきた。いつもより甘えるシマを抱っこして温室に向かった。





―side.栄



「鶴岡、すごく嬉しそうだけど何かあった?」


クラスメイトの所へ戻ると、そう言われた。気付かない内に笑っていたらしい。


「うん、いい事知っちゃった」


にこにこ笑ってあげれば、クラスメイトはそれで満足する。
単純な奴ら。バカばっかり。


「いい事?何だそれ、教えろよ」

「ダメー。秘密だよ」


クスクスと笑う。

温室ね。ぶっ壊してあげる。
覚悟してよね……江夏さん。



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