SMILE!
4
「わかりにくくはないで。あー、でも他の奴はわかりにくいかもしれへんなぁ。でも、ポチをよく見とる奴ならわかると思うで?」
「…そうか」
ちょっと嬉しい。
もうひとつ但馬に聞きたい事がある。それは、赤塚の事。
「…但馬は、赤塚の事…どう思ってるんだ…?」
「きゃんきゃん煩い犬。小型犬やな。飼い主に甘やかされて育っとるから飼い主よりも自分が上やと思っとる。そういう犬」
「……嫌い、なのか…?」
そう聞くと、但馬は苦笑した。
「嫌いにはなれへんよ。ああいう犬ってどうしても構いたくなってしまうんや」
但馬はどうも人と犬を重ねて見る癖があるようだ。でもそれはそれで但馬のいい所かもしれない。
「でもなぁ、予想以上に我が儘な犬やった。どうしようも出来へん。犬より酷かったわ」
やっぱり嫌いにはなれん。だけど風大を見る目は変わったわ、と但馬は言った。
どういう風に見る目が変わったのか、おれには分からないが但馬にとってそれは大きな変化だったんだろう。
「あー忘れとった!今日生徒会の仕事あるんやった…、めんどいなぁ」
がりがりと自分の頭を掻き乱し、但馬はおれから離れて、立ち上がる。腕には寝ている牛乳をしっかりと抱いている。
「ポチ、また会おうな」
にっこり笑う但馬に頷く。但馬はぐしゃぐしゃとおれの頭を撫でてから、元来た道を戻っていった。
一人になった。隣にシマはいるけど。
「……あ、」
花壇はここだけじゃない。ずっとここにいるわけにも行かない。他の花壇も確かめに行かないと。
牛乳に踏まれて、さっきより痛む足を我慢して立ち上がる。
「…シマ、おいで」
声をかけるとシマは素直におれの後ろをついて来た。
他の花壇もやっぱり荒らされていて、どうしようもなく悲しくなった。最後の花壇は運動場の近く。
もしかしたら、そこだけは無事かもしれないと、ほんの少しの期待を持ち最後の花壇に向かう。
運動場にはジャージ姿の生徒がいた。体育の授業らしい。運動場の端にある花壇も同じだった。でも、ひとつだけ無事な花があって、嬉しくなった。
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