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SMILE!
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「ぎゅうにゅうー!」


そんな叫び声が聞こえた。それに聞いた事のある声。
校舎の曲がり角から現れたのは、但馬だった。


「あー!ポチー!!牛乳もおるやんけー!」


走って近寄る但馬。
牛乳ってこの犬の名前、か…
もっとマシな名前はなかったんだろうか…


「……但馬の、犬なのか…?」

「そうやで。…あー、でも牛乳の事、秘密な。バレたらコイツ学園から追い出されてまうやろ?」


誰にも話してないんだろうか?
良仁さんに話せば、それなりに対応してくれるはずだ。


「学園の前で拾って、家に連れて帰ろう思うたんやけど、コイツ学園から離れたがらんのや」


今だにおれの後ろに隠れている犬…牛乳を撫でる但馬。
その顔は幸せそうで、加賀谷が言ったように本当に犬が好きなんだな、と感じた。


「……理事長に、話してみたら、どうだ…?…おれも、シマを飼うの、許してもらってる、から…」


シマを示すと、但馬はキラキラした目でおれを見つめてくる。


「ホンマに!?」


コクンと一度頷くと、但馬は嬉しげに、今度話してみるわ、と笑った。
牛乳は元気を取り戻したのか、またしてもおれに飛び付いて来る。


「ポチ、牛乳に好かれてんなぁ」

「…た、但馬…その、どうにかしてくれ」


牛乳を指差すと、但馬は首を傾げた。


「何でや?」

「……いや、あの…犬…苦手、なんだ」


おれの言葉に但馬はポカンと口を開け、間抜けな顔をした。


「…え、そーなん?ポチ、犬好きそうな顔しとるで?」


どんな顔だ。嫌いではない。ただ苦手なんだ。
可愛いと思う。でも、それは遠くから見た場合のみだ。


「何で苦手なん?」

「……吠える、し…、無駄に、はしゃぐから…」


犬が好きな人なら堪らなく嬉しい行為かもしれないが、おれにとっては、苦手なものだ。
何が嬉しくてそんなに、はしゃぐ必要があるんだと思ってしまうのはおれだけだろうか?その点猫は、はしゃがないし、無闇に近寄って来ない。


「吠えるて…、それは犬の仕事やで。番犬が吠えんやったら意味ないやろ…」

「……苦手な、ものは苦手だ」


ツンと但馬から顔を反らす。


「ポチかわえぇっ」

「……っぅわ、」


ぎゅうっとおれを抱きしめた、但馬にわしゃわしゃと頭を雑に撫でられた。



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