SMILE!
苦手
朝、シマに顔を舐められ目を覚ます。ヤケドした両足がほんの少し痛むが、歩けないわけでもない。
「……シマ、おはよ」
シマの頭を撫でて、ベッドから立ち上がる。
朝ごはんは、昨日青柳から貰ったパンで済ませる事にした。シマはすでにエサを食べ終わり、扉の前にちょこんと座っていた。
「…今日は、おれと一緒に来るのか?」
「んにゃー」
シマが窓から出て行かずに、こうやって扉の前で座っている時は、おれについてくる時。
最初っから、おれについて来る事は珍しい事なので、急いでパンを食べて、水やりに行く準備を整えた。
「…シマ、行くぞ」
足元を踏まれないように、少し離れて歩くシマを連れて、花壇に向かった。
水やりを終えたら、真樹先生の所へ行こう。少しヒリヒリするくらいで、あまり気にならないが、ガーゼやら交換しに行かないと、マズイ事になりそうだし……真樹先生に怒られる。
それだけは回避したい。
「……え…、」
花壇についたのはいいが、いつもと違う光景が広がっていて、自分の目を疑った。
昨日まで綺麗に植わっていた花は無惨にも踏み潰されていた。
「……、」
花壇の前にしゃがみ込み、踏み潰されてぐしゃぐしゃになっている花にそっと触れる。
「……ごめん、な」
これはきっと親衛隊の制裁。防ぎようのない事かもしれない。
自分自身に何かされるより嫌な事だ。花はおれの仕事相手で、それが無くなってしまえば、おれの仕事も必然的になくなってしまう。
シマが心配そうに擦り寄ってくる。そんなシマに大丈夫だと頭を撫でた。
「……はあ」
ため息を吐いたその時花に触れていた手をぺろぺろと舐められた。
いや、シマじゃなくて…
だって、シマは反対側にいる。
恐る恐る目線を下げると、犬がおれの手を舐めていた。たぶん、雑種。
「……い、いぬ…犬…」
まさか犬がいると思わなかった。しかも大きさはシマの約三倍。
固まっているおれをよそに犬は、おれに飛び付いて来た。ちょうどヤケドしている箇所に乗る犬。
「…いたい、いた、い」
「わんっわんっ」
喜ぶ犬。
痛いから、どいてほしい。
シマはおれが困っているのが分かっているのか、はしゃぐ犬に、猫パンチした。それに怯えた犬は、おれの後ろに隠れた。
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