SMILE!
4
「……っ…!」
隠岐は、おれにキスをしていた。
何が起こっているのか、おれは分からなかった。何故こんな事になったのかも
「…ん……っふ、」
ただ触れるだけのキスじゃなくて、大神の時と同じようなキス。
咥内に隠岐の舌が入って来て、動き回る。苦しくて、泣きそうになった。
ろくに抵抗も出来ないくせに
大神の言葉が、頭の中を埋めつくす。
「……っはぁ、」
隠岐の唇が離れた時には力が抜け、イスにもたれ掛かる。
「はちゅ、」
青柳は悲しそうな顔をしていた。
…ああ、あの時、謝ったのは、こういう事になると分かっていたからか。
「はっちん、うどん…のびちゃうよ」
黒川は無理矢理笑顔を作って、五十嵐はじっとこっちを見ていて、木野は無言でラーメンを啜っていた。
食堂に響くおれへの中傷は止まない。むしろ、どんどん酷くなっていた。その光景を、鈴や加賀谷達がどんな感情で見ていたのか、おれは知らない。
「…んで、何でオレはダメなのに、アンタはいいんだよ…!!」
ドンッと後ろから背中を押され、テーブルの上のうどんに腕が当たり、運悪くおれの方へこぼれた。
「熱っ…」
「っはちゅ!」
ガタリと青柳が立ち上がる。
「はちゅっ、」
心配してくれる青柳には悪いが、それどころではなかった。
熱い。両足が熱い。
「宰、馬鹿犬を連れて行け」
隠岐のその言葉に五十嵐はイスからおれを抱き抱え、足早に歩き出す。
「……っ」
「……八、大丈夫だから、」
食堂から出た五十嵐は保健室に向かっている。寮にも保健室の様な所があるらしく、五十嵐はそこの扉を足で蹴飛ばした。
そこには真樹先生がいて、驚いた顔でおれを見た。
「はっちゃん!?どうしたの!」
詰め寄ってくる真樹先生に五十嵐が代わりに答えてくれた。
「……八、やけど」
それを聞いた真樹先生の対応は素早かった。両足を水で冷し、いろんな薬を取り出して手当てをしてくれた。
「大丈夫、たいしたことないわ。だけど、今日と明日くらいは痛むと思うから最低でも一日二回交換しに来てね」
「……はい」
目の前に立つ真樹先生を見上げると、真樹先生は優しく頭を撫でてくれた。
「はっちゃん、そんな格好で上目遣いしたら、襲っちゃうわよ」
自分の今の格好を見て、顔を手で押さえた。
上はTシャツに下は下着のみだった。手当てをするためには仕方ない事なのだが、恥ずかしすぎる。
「……襲うの、ダメ」
後ろから五十嵐に抱きしめられて、身動きが出来なくなった。
そういえば、食堂の皆はどうなっただろうか。
赤塚は何で、おれを押したんだろう。おれは何か赤塚の気にいらない事をしてしまったのか?
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