SMILE!
3
食堂にいた誰かが隠岐様に触るなんて、と言葉を発した。
隠岐を見ると、赤塚に腕を掴まれていて、冷めた顔をしていた。見られているのはおれじゃないのに、怖かった。
「晃雅キレそうだなぁー」
自分には関係ないといった口調で言う青柳。
「……とめなくて、いいのか」
「大丈夫、晃雅もそこまでガキじゃないから、殴りはしないよー」
殴る、殴らないの問題なのか…?何か違うような気がするが、青柳が大丈夫だと言っているから、大丈夫なんだろう。
他の三人も、ただ見ているだけで止めようとはしていなかった。
「糞ガキ、離せ」
糞ガキって。あんまり歳変わらないのに、と思ったのはおれだけだろうか。
「なっ、オレはガキじゃない!」
いつまでたっても、赤塚は隠岐の腕を掴んだまま。
「バカだねー、あの子」
クスクスと馬鹿にしたように青柳は笑う。
「離せって言ってんだろうが。殺すぞ」
隠岐は赤塚の手を振り払った。隠岐が言うと冗談に聞こえないから、嫌だ。
隠岐は呆然とする赤塚を放置して、近くの空いていたテーブルに座った。
「お前ら、さっさと座れ」
「はーい」
ちょうど六人座れた。隠岐、おれ、青柳の順に座り、その反対側に五十嵐、黒川、木野が座る。
ちらりと赤塚を見ると、香西だけが赤塚を心配していた。他の皆は離れて赤塚を見ていた。
「はちゅ、肉うどん好きー?」
「……ああ」
「よし、じゃあはちゅは肉うどんでー」
「何で美涼が決めてんだよ、江夏に決めさせろよ」
いや、木野…おれは別にうどんでいいぞ…?自分じゃ滅多に作らないし。
「だってー、うどんと親子丼が食べたいんだもーん。ねぇ、はちゅいいよねー?」
コクンと頷くと青柳はやったーと笑った。それから何かハイテクな機械で料理を頼んだ。
隠岐は定食、五十嵐はカレー、黒川はから揚げ、木野はラーメン。
晩御飯にラーメンってありなのか
すぐに料理が運ばれて来て、さすが金持ちの学校だなと感心していたら、左に座る隠岐に顎を掴まれ無理矢理首を捻られた。目の前には隠岐の顔。
「お前に恨みはない、」
は?恨み?何の事…?
「……隠岐…?…なん、の…」
何の事を話しているんだと聞きたかった。でも、それは食堂に響き渡る叫び声と
隠岐の唇に遮られた。
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