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SMILE!
2



ざわついていた食堂は、一瞬で静かになった。
全校生徒がいるんじゃないかというくらいの生徒の数。それが一瞬で静かになったのだ。こっちの方が異様。きっとそれは前を歩く、隠岐晃雅という存在がそうさせている。
ちらほらと小声で話す声が聞こえる。それを聞いていると、紅が食堂に来るのは滅多にない事らしく、それで驚いているみたいだ。
その声の中には、やっぱりおれに対する中傷もあった。


「珍しいな、お前らが食堂来るなんて」


食堂の奥から見知った顔がいくつも現れた。生徒会と風紀
隠岐に話しかけたのは加賀谷でおれと目が合うと微妙な顔をした。


「お前には関係ない」


隠岐がそう言うと同時に、昼の食堂と同じように空気の読めない声が響く。


「なぁ、アンタ誰だ?」


それはやっぱり赤塚で、こんな状況で隠岐にそんな事を言えるのはきっと赤塚くらいだろう。
赤塚の少し後ろには、鶴岡と…大神がいた。


「……っ…、」

「はっちん、大丈夫だよ」


おれの様子に気づいた黒川が、優しく声をかけてくれたおかげで、ちょっとマシになったが、それでも少し不安で、俯いた。


「アンタすっげーカッコイイな」


赤塚の大きな声に顔を上げれば、赤塚はキラキラと目を輝かせ隠岐を見上げていた。
隠岐がどんな顔をしているか後ろ姿からじゃ分からないが、たぶん嫌そうな顔をしてそうだ。


「うぜえ」


隠岐がそう言うと、赤塚は悲しそうな顔をしたがそれは一瞬の事。


「お、オレ赤塚ふ―」

「お前の名前なんか、興味ねえんだよ」


赤塚の言葉を遮った隠岐の言葉はいつもより数段低い声だった。


「馬鹿犬、来い」


え…ここでおれ?青柳と黒川は繋いでいた手を離し、青柳はおれの背中を軽く押した。


「はちゅ、行こうかー」


その言葉に頷くと、後ろにいた五十嵐にぐしゃぐしゃと頭を撫でられた。
隠岐の隣に行くと、さっきよりも中傷が酷くなった。


「なぁ、名前教えてよ」


そう言う赤塚を隠岐は無視して、おれに話しかけてきた。


「何が食いたい」

「……は?」


わけが分からず、首を傾げると後ろにいた青柳がオレの肩に顎を乗せ、説明してくれた。


「せっかくはちゅと食堂に来たんだから、食べなきゃ意味ないでしょー?大丈夫、晃雅の奢りだからねー」

「聞いてんのかよ!」


赤塚の叫び声が響き渡る。



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