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SMILE!
動く



いろいろ悩んでいたら、ぐーとお腹がなった。


「…お腹すいた」

「にゃー」


いつの間にか帰って来ていたシマが、おれの声に反応するように鳴いた。


「…はい、シマご飯」


先にシマにエサをあげる。
それから、自分の晩御飯を作ろうとキッチンに立った瞬間、家の扉が開いた。
え?と開いた扉を見ると、


「……隠岐…?」


隠岐が無表情でそこにいた。隠岐はずかずかと入って来ると、おれの腕を掴んだ。
それに大神との事を思い出して、ビクリと震えると、隠岐は怪訝な顔をしたが、おれを掴んだまま歩き始める。


「……お、隠岐…っ」

「黙ってろ」


一喝され、開いていた口を閉じた。こういう時、抵抗出来たらいいのかもしれないけど相手は隠岐。抵抗したところで、蹴られて終わりだろう。
心の中で浅くため息をついた。
何か用なんだろうか?話だけなら、家で話せばいいだろうし…

隠岐の向かっているのは寮らしい。その目的地につくと、そこには紅の四人がいて、おれと隠岐に気づいた青柳と黒川が手を振った。


「はちゅー」


ガバッと青柳に抱き着かれた。
相手は青柳だと分かっていたが、無意識に身体が強張っていた。


「……あ、おやぎ…、」


そんなおれに気づいているのか分からないが、青柳はぎゅうっとより強く抱きしめた。そして、おれだけにしか聞こえないように耳元でごめんねと呟いた。
どうして、謝るんだ?何か謝らなければいけないような事を青柳はしたのか?


「みぃちゃん、」


黒川が青柳を呼ぶ。青柳はその声に反応して、おれから離れた。


「よし、じゃあ行こっかー」


今度は青柳に手を取られ、その反対側は黒川が握った。どこに、とは聞けずおれは紅の五人と寮の中に入った。
後ろには五十嵐と木野がいて、前を隠岐が歩く。

廊下に誰ひとり生徒はおらず、しんとしていて、異様な雰囲気だった。


「はっちん、ついたよ」


黒川の声に前を見ると、大きな扉。中からはざわざわと声がする。


「……ここ…、」

「食堂だ」


答えてくれたのは木野で、おれは呆然とした。食堂にはもう来ないと思っていたから。
場所は違うが、今日食堂に来るのは二度目。


「行くぞ」


そう言った隠岐は躊躇いもなく、食堂の扉を開けた。



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