SMILE! 黒川と 家に駆け込み洗面所に向かった。 勢いよく水を出し、顔を洗って、うがいをする。何度も何度も。 「…っげほ……はあ…、」 濡れた顔を拭く気にもなれず、洗面所の壁に背を預けて、ずるりと座り込む。 ぼーっとしていたら、玄関の方から声がした。 「はっちーん、いるー?」 その声は黒川で、無視するわけにもいかないのでふらふらと立ち上がり、黒川の元に向かった。 「……くろ、かわ」 「はっちん!?すっごい顔色悪いよ!なに、具合でも悪いの!?」 違う、と首を振ったが黒川はおれの腕を掴み、イスに座らせた。 「そんな酷い顔してるのに、何もないわけない。でも、体調が悪いわけじゃないんだよね?」 「……ああ」 よかった、と黒川はニッコリと微笑んだ。黒川はパソコンをテーブルの上に置くと、何故か洗面所の方へ向かった。 何も言わず、黒川の行動を見ていた。洗面所から戻って来た黒川の手にはタオルが握られていた。 「顔、ちゃんと拭かなきゃダメだよ」 黒川はタオルでおれの顔をごしごしと拭いた。 少し力が強くて痛かった。 「はっちん、何があったのか話してくれる?」 「……」 言いたくない。おれの話を聞いて、黒川がどう思うのかが怖い。 「あのね、ちぃがここに来た理由なんだけど、はっちんが生徒会と風紀と一緒に食堂にいたから、その話を聞きに来たっていうのもあるんだけど…ウチのリーダーがね、おい千里、馬鹿犬の様子を見て来いっていう命令があったからなんだよ」 隠岐、が? 「……」 「まあ、こうちゃんなりに心配してるんだと思うよ。それで、はっちん本題なんだけど、そんな辛そうな顔してるのは誰のせい?」 ニッコリ笑っていた黒川の笑顔が消えた。 「大丈夫。誰にも言わないから。こうちゃんにも言わない」 「……言いたくない」 「んー、じゃあ今日食堂にいた奴ら、手当たり次第に潰していくことになっちゃうけどいい?」 怖いです…、おれのせいでそんな大事にはしたくない。 「……それは、止めて欲しい」 「じゃあ教えてね?」 今度は、にっこり笑う黒川。 . [まえ][つぎ] [戻る] |