SMILE! ライバル side.依鈴 八さんが中に入ったのを見て、武伊の方を向く。 「…武伊も八さんと知り合いなのか」 「まあ…でも一度話しただけ、だけど」 気まずそうに視線をそらす武伊 「武伊、お前の好きな人って…八さんか」 一瞬驚いたような顔をした武伊だが、すぐに真面目な顔をして頷いた。 「俺、一年生の頃に江夏さんに一目惚れしたんだ」 そんな前から八さんの事、好きなのに、話したのは一回。どんだけ純情なんだよ。 武伊の好きな人が八さんじゃなかったら、応援してたけど、 無理だな、こればっかりは。 「悪いけど、武伊に八さんは渡せない」 武伊の目を見てそう言えば、武伊は苦笑した。 「八さんって名前呼びしてるし、さっきの依鈴の江夏さんに対し方とか見てたらさ、そうなのかなぁとは思った」 武伊は視線を宙に漂わせたあと、俺に戻した。 「依鈴が江夏さんを好きでも、それは俺も同じだし、俺だって…依鈴には渡したくない」 武伊の真剣な顔なんて初めて見たかもしれない。 「依鈴、遠慮しないからな」 「それはこっちのセリフだ」 笑うと武伊も笑った。 誰にも知られたくなくて、誰にも渡したくない、 なのにあの人はいつの間にか、たくさんの人と出会っていた。 止めてほしいと思っても、それは俺が言っていい事じゃない。 今日だって、食堂に八さんがいるのを見て、心臓が止まりそうだった。 何でここに、そればっかり。 まだ、それだけなら良かったかもしれない。八さんの周りには戸谷がいて、会長と副会長、茉も武伊もいた。赤塚以上に周りに人が集まっていた。 「…依鈴?」 「…あ?ああ、何だよ」 考えに耽っていたら、武伊が話しかけてきた。 「そろそろ中に入ろうよ」 「…そうだな」 八さんも待ってるだろうし、咲と菊も気になる。 武伊と共に管理室に入ると、双子の間に八さんが座っていて、それを戸谷が泣きそうになりながら見ていた。 テーブルの上にはパンが大量に散乱しており、八さんはクロワッサンを食べていた。 上総先輩、買いだめしてたのか。双子も元気みたいだし良かった。 なんて思いながら、八さんに近付いた。 . [まえ][つぎ] [戻る] |