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SMILE!
5



「なぁ、何で用務員がおるん?」


赤塚の方にいたはずの、但馬が目の前にいた。びっくりして、おれは一歩後ずさる。


「……、」

「聞いてるん?」


一度頷く。


「よし、決めたわ!ポチやな、ポチ!」

「……は…?」


困惑した目で但馬を見れば、ポチと呼んで抱き着いてきた。


「っ…え…ぁ、離し―」


離してくれ、という言葉は食堂が揺れるほどの叫び声に掻き消された。
何で今日初めて会ったばっかりの但馬に抱き着かれなければいけないんだろうか。


「茉、止めろ」


加賀谷が但馬とおれを引き離した。さっきまで会長先輩にツボって笑っていた時とは違い、真面目な顔をしていた。


「ええやん。ヤバいで、その子!ポチにちょー似てるんやもん!」


その子っておれの事か?おれは一応、年上だが。


「いやー、マグロにも似とったけど、やっぱポチやな!」


マグロ?ポチ?ペットの名前だろうか?
ポチって事は犬?でも、マグロって猫っぽい。
首を傾げていると、加賀谷がおれの耳元で話し出した。


「茉は、大の犬好きだ。ポチもマグロもペットの名前だろ」


ああ、それでおれがそのポチに似ていると


「それより、お前を無闇に茉から助けるんじゃなかったな」


おれにしか聞こえないように呟く加賀谷。
どういう事だ?但馬から離してもらったのは、助かったけど、ダメだったのか?
加賀谷と目を合わせると、加賀谷は苦笑した。


「さっき茉がお前に抱き着いたからな確実に親衛隊が動く。茉の親衛隊はそんなに過激派じゃない。だが、」


一旦そこで言葉を止めた。


「オレがお前を助け、こうやって隣にいるだけで、オレの親衛隊も動く」


何だ、そんな事…加賀谷は気にしていたのか。
そんな事って言える程、軽い話じゃないけど、食堂に来た時点でおれが制裁に合う事は決まっているような気がする。


「ま、お前一人くらいなら守れるかもしれねぇけどな」


ニヤリと笑った加賀谷は、いつも通りだ。
岩代も加賀谷も、優しい。親衛隊の制裁に合うかもしれないおれを気にしてくれている。

…あれ?おかしい。
隠岐達が言うには、生徒会と対立するのは、生徒会が制裁を受けている生徒を放置するから…とかそんな理由だったはず。
でも実際は、違う。
用務員なんて、加賀谷達からしたらどうでもいい立場なのに助けてくれようとしている。
加賀谷も岩代も他の皆も、親衛隊の制裁を放置するような…、そんな事するようにはみえない。

対立する必要性が分からない。
歓迎会の時、加賀谷本人も言っていた、対立したくてしてるわけじゃない、と。
考えれば考えるほど、頭が混乱した。



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あきゅろす。
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