SMILE!
4
「会長先輩、」
先輩はつけない方がいいと思う。
現に加賀谷は笑いを堪え、肩が震えている。
「やば、コイツ本物の馬鹿じゃねぇか…ックク」
加賀谷のその言葉は赤塚には、聞こえておらず、聞こえていたのはたぶん……おれと滝登、岩代、矢沼くらいだろう。
「何笑ってんだよ…!」
加賀谷が笑っているのに気付いた赤塚は吠えた。
…もうちょっと、声を小さくしてほしい。
「あーいや、何でもねぇよ」
会長先輩がツボに入ったらしい加賀谷は、今だにクツクツと笑っている。それを見ていた岩代は、呆れてため息をついていた。
視線を感じて、そちらを向くと視線の主は矢沼で、バチと音がするくらい目が合った。
「…うひっ!」
矢沼は変な声を出して、キョロキョロと視線をさ迷わせた。
「……?」
何なんだ…?
「…貴方、何でここにいるんですか」
隣にいた岩代が小声で話しかけてきた。加賀谷や香西と話している赤塚は気付いていない。
「…滝登に、誘われて…」
正直に話すと、岩代はまたため息をついた。
「馬鹿ですか、貴方は。今誰が1番場違いだと思います?周りを見なさい。親衛隊の事…知らない訳じゃないでしょう」
怒ったような口調。それに促され、改めて周りを見渡す。
「……っ、」
食堂にいるすべての生徒の視線がおれを刺していた。
赤塚でも、誰でもない……おれだけを。
場違いなのは、おれだ。
生徒会に近付けば、制裁に合う。それは自分の意思じゃなくても。
岩代はその事を言っているんだろう。
心配してくれたのかと思うと嬉しい。岩代はそんなつもりはないのかもしれないが、おれはそう感じた。それと同時に、この場所から抜け出したいとも思った。
「少しは、立場を考えてみたらどうですか」
用務員という立場。
それは、何よりも脆く崩れやすいもの。この学園じゃ、用務員という立場は一番弱い。
それは分かっていた。
分かっていたのに、おれはこの場所に来てしまった。
自業自得。その言葉が頭の中をぐるぐる回った。
親衛隊の制裁にあっても、それは自分のせいだ。用務員が来てはいけない所におれは来てしまったのだから。
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