SMILE!
3
「おかーさん、ご飯…」
くいと袖を滝登に引っ張られる。
「せっかくだから、皆で食べませんか?江夏さんが良ければですけど…」
鶴岡からの誘いは、嬉しかったが赤塚と大神、それに滝登はどうだろうか。
「…でも…皆は、」
「僕は構わないけど」
「滝登もおかーさんがいいなら、いいよぉ」
どうやら、大神と滝登は一緒に昼ご飯を食べてもいいらしい。
赤塚はどうなんだろうと、目線を向ける。
「…別に、いいけど」
「じゃあ決定だね」
ニッコリと笑った鶴岡に誘導されて席につこうとした時、歓声で食堂が揺れた。
入学式以来の煩さに、顔をおもいっきりしかめてしまう。
「風ちゃーん!!」
人混みの向こうから、パタパタと桃色の髪の…、香西杏が走って来ていた。
その後ろには、加賀谷、岩代、矢沼と…但馬?がいた。生徒会が全員揃っている。
食堂にいる生徒達は、生徒会に好意の視線を寄せていた。
ふと加賀谷と目が合う。
何でいるんだ、という顔をされたが、すぐに加賀谷はニヤリと笑った。
…嫌な予感がした。
「杏先輩!」
香西は赤塚に抱き着いた。食堂中から、悲鳴があがる。
「風ちゃん、お昼まだでしょー?一緒に食べよー?」
「ああ!いいぜ」
その光景をぼーっと見ていたら、肩をポンと叩かれた。
「よお、何してんだ江夏八」
「……加賀谷、」
いつの間にか、加賀谷と岩代、矢沼が近くにいた。但馬は、赤塚の方に。
矢沼は顔を真っ赤に染め、落ち着かない様子で、岩代はおれを見るなり、顔をしかめた。
「あ、ちょっと待って!」
赤塚が声を上げ、香西の腕から抜けてこっちへ近づいてくる。
「なあ、アンタが生徒会長?」
「あ?」
きらきらした目で、加賀谷を見上げる赤塚を加賀谷は嫌そうな顔をして見下ろした。加賀谷は赤塚を避けていたから、今回が初めて会うんだろう。
「なあ、名前は?オレ赤塚風大っていうんだけど、」
「オレの名前か?そうだな…」
そうだな、って何だ…
名前を言うのに何をそんなに悩む必要があるんだ。
「生徒会長だ。会長とでも呼べ」
…その名前は無理がある。
ほら、赤塚もポカンとしてる。
「会長っていう名前、なのか?」
「ああそうだ。会長だ」
自信満々に名乗る加賀谷。赤塚は明らかに、困惑していたがわかったと最終的には信じていた。
もうちょっと、マシな嘘をつけなかったんだろうか。
まあ、生徒会長という事は嘘ではないが。
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