SMILE!
折り紙
歓迎会も無事終了し、いつも通り花壇の水やりをしていた。
いい天気だな、と空を見上げていたら、
「…っぅ―…っく―」
どこからか、鼻を啜る音と泣くのを堪えてるような声がした。その声の主をうろちょろと探していたら、少し離れた所に膝を抱えて座っている生徒がいた。
校舎の壁に背を預けて、座っているその生徒の手にはビニール袋。
ビニール袋の中にはいろんな色の折り鶴がたくさん入っていた。
「……大丈夫、か…?」
近づいて声をかけると、その生徒はビクリと肩を震わせて顔を上げた。
「……悪い…」
驚かせてしまった。
突然声をかけられ驚くのは、当たり前だ。おれは良く分かっているのに。今度から気をつけないと駄目だな。
「…だ、れぇ?」
目に涙をいっぱい溜め、首を傾げている。その行動が小動物っぽくて、頭を撫でた。
「……あ、悪い…」
我に帰り、その生徒の頭から手を離す。
「何で謝るのぉ?」
「……嫌、だった…だろ…?」
その生徒はぶんぶんと首を横に振った。…嫌じゃないって事か?
少し離れた所に座ると、その生徒はわざわざ立ち上がって、おれのすぐ隣に座った。
……近い、
「ぼく、戸谷滝登っていうの」
戸谷か。こういう場合はおれも名乗った方がいいのか…?
「おかーさん」
「……は…?」
お母さん?
戸谷はおれを見てそう言った。
言っとくがおれは男で、こんな息子はいないし……出来ればお父さんの方がいいんだが…
「あのね、おかーさん、ふぅがね、鶴ばっかりつまんないって言うのぉ…っう」
いやだから、おかーさんって…おれ…おかーさんになってるのか?
しかも、また泣き始めた。
話の流れがよく分からない。ふぅって誰だ?
とにかく泣き止ませたい。泣かれるとどうしていいか分からない。
頭を優しく撫でてやると、腰に抱き着いて、更に泣いた。
「うぇっ…鶴しかしらないのぉっ…お母さんに…おしえて、もらった…のっ」
本物のお母さんか、
お母さんに折り鶴の作り方しか教わってないと、そう言いたいんだろう。
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