SMILE! 2 「そうだよな!でもオレ、落とした覚えないけど」 正しくいえば落としたじゃなく、落ちただろう。どっちにしろ、この馬鹿は自分のせいじゃないと言い張るだろうが。 「きっと気付かない内に落ちたんですよ」 「そうかな?でも、やっぱりさ」 やっぱり? お前は何を言う気だ。その煩い口、縫ってやろうか? 「風大、指輪見つかってよかったね」 「栄…、うんまあ確かにな!」 馬鹿を遮ったのは知らない奴。 栄?ああ、一年の鶴岡栄か。 タチの奴らに人気があるとかで騒いでいた。赤塚風大より綺麗な顔をしている。 ステージ上にいた鶴岡栄と目が合う。鶴岡は焦ったように頭を下げた。 「あ、あのっ岩代様、ぼく鶴岡栄っていいます」 「知っていますよ、君は有名ですからね」 にこりと笑えば、相手はそれで満足する。現に鶴岡は顔を赤く染めている。 「そ、そんな有名じゃ―」 「栄!様なんかつけなくていいって!気持ち悪いだろ!」 それを決めるのはお前じゃない。…勝手な事言って、気持ち悪いだと? 生徒会や風紀、紅の奴らが様付けされるのは僕らが上に立つ者だからだ。顔で決められたとは言っても、それだけの能力がある。 なのにこの馬鹿は気持ち悪いと言った。 鶴岡もこんな奴に目付けられて大変だな。 「そういえば、茉はどうしたんです?」 茉もこの馬鹿にべったりだったはずだが、歓迎会が始まってから、茉の姿が見えない。 何をしているんだ、あのエセ関西人が… 「知らなーい。タケちゃんとサーちゃんもいないしー」 武伊と一沙がこの馬鹿に興味がない事は知っている。だから、極力会わないようにしているんだろう。特に一沙は。 この馬鹿に指輪を持たせたら何か起こると思っていたが、そうでもなかったし、というか迷惑だから、今からは僕が持っておこう。 歓迎会もあと二時間で終わる。 . [まえ][つぎ] [戻る] |