SMILE!
2
五十嵐と別れ、八さんを連れて歩いているわけだが、早く人目につかない所にいかないと。
だが、最悪のタイミングで、前から数人の生徒が来ていた。幸い、向こうは俺達に気付いていないようだった。
「すみません、八さん」
「……え?」
気づかれる前に、すぐ隣にあった空き教室になだれ込む。
「…っ!」
「っいてぇ…」
勢いよく入り込んだせいで二人して床に倒れた。そのせいで頭を床にぶつけた。
まあ、おかげで見つからずにすんだけど…
「…す、鈴…大丈夫、か?」
「はい、大丈夫…で、す、」
何なんだ、この体勢は。
八さんが俺の上に乗ってる。まるで、八さんに押し倒されてるような…
「…あ、の、八さん、」
動揺するのも無理はない。
ありえないくらい八さんが近くにいる。抱きしめる時とは、比べものにならないくらい心臓が煩い。
「…わ、悪い…すぐ…どくから」
俺の上から、退こうとする八さんの腕を掴んで止める。
「……す、ず?」
「…どかなくていいです」
上半身だけを起こして、膝の上に乗っかっている八さんを片手で抱きしめる。
「…え、と…す、鈴?」
戸惑う八さんを無視して、抱きしめる力を強くした。
「どうして、五十嵐と一緒にいたんですか」
「…そ、れは…あの…その」
俺に言えない事なんだろうか。
もしそうだったら、すげえムカつく。
ん?あれ?八さんってアクセサリーとかつけてたか?いや、八さんはそういうのつけないだろ。
首にはキラリと光るネックレスがあった。
「八さん、ちょっとすみません」
「……?」
服の中に隠れていた、ネックレスを取り出す。八さんが慌てていたけど、無視。
「何で、八さんが持ってんだよ」
それは指輪で、紛れも無く紅のものだった。紅の鍵は、隠岐なんじゃないのかよ。何で、八さんが…
ああ、だから五十嵐が一緒にいたのか。もし、八さんが鍵だとバレた時の保険か、五十嵐は。
「…鈴…あ、あの」
「八さんが鍵なんですね」
俺の知らない所で八さんが何かに巻き込まれている事が許せない。
そして、それを知らない、知る事の出来ない自分も許せない。
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