SMILE!
想い side.依鈴
風紀の鍵である上総先輩は狙われる事も気にせず、一人で行動している。だから、双子も俺も歓迎会中は自由にしている。
戸谷は知らないが。
一人で食堂に向かっていると、紅専用の食堂から、八さんと五十嵐が出て来た。
何で八さんがこんな所にいるんだ。しかも、五十嵐と一緒に。
「八さん、」
思わず、八さんに声をかけると八さんは鈴と名前を読んでくれた。
顔にいくつも貼ってある絆創膏が痛々しい。八さんの隣にいる五十嵐からはかなり睨まれた。
「何してるんですか?」
「…え、っと…あの…」
「……お前に…関係ない」
五十嵐、お前に聞いてねぇよ。つか、お前八さんにくっつきすぎ。
「…い、五十嵐、鈴」
俺と五十嵐を交互に見る八さん。
「八さんちょっと話しませんか」
五十嵐の事とか。
「……ダメ…」
「俺は八さんに聞いてるんだよ」
「…あ、五十嵐…鈴なら大丈夫だから…話してきても、いいか?」
ふと五十嵐を見ると、無表情の五十嵐が少しだけ悔しそうな顔をしていた。
「じゃあ、行きましょうか」
ここで八さんと話すのはいろいろとまずい。それに、二人っきりで話したいんだ。
「…ん、わかった」
「……待って…」
八さんと歩き出そうとしたら、五十嵐が八さんの腕を掴んだ。
「…?」
「………」
五十嵐は無言で、八さんを抱きしめ、首筋に顔を埋めた。
「…い、いがらし?あ、あの…えっと、」
慌てる八さん、可愛いなぁ…ってそうじゃない。クソ野郎…さっさと八さん離せよ。
「おい、五十嵐…八さん離せ」
八さんを抱きしめながら、俺を睨みつけてくる五十嵐。それに対抗して俺も思いっきり睨みつけた。
「…五十嵐…、離して、くれ」
八さんがそう言うと、五十嵐は素直に聞いて、八さんを離した。
すかさず、八さんの手を取り、五十嵐から遠ざけた。
「…す、ず?」
「行きましょうか、二人っきりで話せる所に」
コクンと頷く八さん。
可愛くて、思わず頭を撫でた。
「…五十嵐…行って、くるから」
「………」
五十嵐は一度だけ八さんに向かって頷いた。
そして、俺に向かって一言、
「……お前には…渡さない」
「それはこっちのセリフだ」
首を傾げる八さんを連れて歩き始める。
お前ら紅にこの人は絶対に渡さない。
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