SMILE!
11
でも、これからどうしようか。
また散歩でもするのか?
「……お腹すいた…行こ」
「…え?」
どこに?
やっぱり五十嵐に手を繋がれて、どこかに連れていかれる。
「…ど、どこ…行くんだ」
「……食堂」
食堂って、おれが行っても大丈夫なんだろうか…?
五十嵐に腕を引かれて、校舎の中に入る。校舎にはあんまり入った事がない。行くとしても、職員室か保健室くらいだ。
「ありゃりゃー?そこにいるのは五十嵐宰くんでないかにゃ?」
見た事ない生徒が前から歩いて来ていた。
オレンジ色の髪の毛。毛先だけが黄色になっていた。真っ黒なヘッドフォンを首に下げ、顎にマスク。風邪でも引いてるのか?しかし、マスクの意味がない。
なんか、チャラい。ホストってこんな感じなんだろうか…
「と、そっちは噂の紅担当の江夏八くんかにゃ?」
語尾ににゃつけるのは癖か?
「……」
五十嵐はその生徒を睨みつけていた。
「まあまあ、そんなに睨まないでくれにゃ。大丈夫だにゃー、ボクは傍観主義だから、江夏八くんに手を出す気はないにゃ」
吊り上がった鋭い目と八重歯が、猫に見えた。
「はじめまして江夏八くん」
無視するわけにもいかないので、ペこりと頭を下げた。
「僕は佐々流星、よろしくにゃ」
「……よろしくしなくて…いい」
「もう、宰くんは酷いにゃー。まあいいけど…八くん?」
「…は、い?」
「楽しみにしてるにゃ」
それだけ言うと佐々はどこかへ行ってしまった。
何を楽しみにしてるんだ?
謎だ。それに佐々は歓迎会中だというのに、どこのハチマキもしていなかった。何故だ?
「…五十嵐…さっきの、」
「……アイツは、ダメ」
それ以上、五十嵐は口を開かなかった。話しかける事も出来ず、ただ黙って五十嵐について歩いた。
手を繋ぐ五十嵐の力がちょっとだけ強くなった気がした。
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